口臭はとても不快なもの。
他人の口臭に気づいたとき、「自分は大丈夫かな?」と不安になったりしませんか?
実はこの口臭、虫歯と深い関係があるのです。
今回は、虫歯と口臭の関連性。そして虫歯以外の口臭の原因と、その治療法や対処法まで網羅してお届けしてまいります。
虫歯による口臭はどんな臭い?この臭いは虫歯の可能性あり
虫歯による口臭の原因
虫歯は歯が痛くなったり、かけたりすることは想像しやすいのですが、どうして虫歯が口臭の原因になるのでしょうか。
虫歯の穴によるもの
虫歯は、ストレプトコッカス・ミュータンスなどの虫歯菌が産生する乳酸によって歯の表面が溶かされて、そこに穴が作られることで生じます。
虫歯によって生じた歯の穴に食べカスがつまったり、そこが細菌が繁殖する温床になったりすれば、口臭が起こります。
神経が腐る
虫歯を放置し、その穴が深くなっていくと、いずれは歯の神経の部分に到達します。
虫歯の穴が神経に到達するということは、虫歯菌が歯の神経に達するということです。
歯の神経は、虫歯菌に侵されますと、最終的には腐ってしまいます。
すなわち、腐敗臭が生じるわけです。
これも口臭を引き起こしてしまいます。
膿によるもの
虫歯によって歯の神経が腐ってしまいますと、歯の根の先に膿を溜めるようになります。
歯の根の先は骨の中にあるので、外部からみることはできません。
しかし、膿は見えないところで増えていきます。
ある程度の大きさになると、骨の中には留まりきれなくなり、歯肉が腫れてくるようになります。
すると、内部に膿を溜めた腫れなので、歯肉から膿が流れ始めると口臭を生じます。
詰め物・差し歯
虫歯の治療で金属やコンポジットレジンとよばれるプラスチック製の詰めものを装着したり、銀歯や金歯を被せたりします。
これら被せものの縁が、歯にぴったりと合う様に出来ていないと、歯と被せものの間に段差が生じてしまいます。
この段差は、食べ物や食べカスが引っかかったり、細菌が繁殖する温床になったりします。
不適切な形状の被せものや詰めものによっても、口臭が生じるのはそのためです。
虫歯以外の原因による口臭元とは?
歯周病
歯周病とは、歯周組織に起こる病気の総称です。
歯周組織とは、歯を支えている組織のことで、
- 歯肉(歯ぐき)
- 歯槽骨(歯を支えている骨)
- 歯根膜(歯槽骨と歯根を結びつけている靭帯の様な薄い膜)
- セメント質(歯根の表面にあり、歯根膜がついている部分)
の4つの部分から成り立っています。
歯周病を引き起こす原因は、歯周病菌です。
歯周病菌は、歯の表面についたプラークの中に潜んでいます。
プラークとは、歯の表面を詰めや爪楊枝などでこすった時にとれてくる白いカスの様なもののことです。
プラークは単なる汚れではなく、細菌の塊であることがわかっています。
歯周病は、蓄積したプラークが歯肉に炎症をおこすことから始まります。
これが歯肉炎で、歯肉だけに炎症が留まった初期の歯周病です。
歯肉炎になると歯肉が腫れてきます。
歯肉が腫れると、歯磨きがしにくい部分ができます。
歯磨きがしにくいところに食べ物が入り込むことが、口臭を引き起こします。
また、歯肉炎が進行すると、歯肉の炎症だけに留まらなくなり、歯槽骨など歯肉の周囲組織にまで炎症が広がります。
これを歯周炎といいます。
歯周炎をおこすと、歯肉の内側などに化膿して膿をためることがあります。
膿がたまることも、口臭の原因となります。
歯周炎では、歯周ポケットとよばれる歯と歯肉の隙間が深くなってきます。
そこで歯周病菌が増殖しますと、口臭を生じるようになります。
智歯周囲炎
智歯とは「おやしらず」のことです。
智歯周囲炎とは「おやしらず」の炎症のことです。
「おやしらず」は他の歯と異なり、まっすぐきちんと生えていることがほとんどありません。
たいていの「おやしらず」は斜めに傾いて生えていたり、埋まったままになっていたりします。
まっすぐはえていても、後ろ側が歯肉で覆われたままだったりします。
そのため、歯みがきが非常にしくい状態にあります。
歯みがきがしにくいため、そこで細菌が繁殖しやすくなりますので「おやしらず」の周囲の歯肉が炎症を起こします。
その結果、歯肉が腫れて口臭を起こしてしまうのです
口腔乾燥症
口腔乾燥症とは、お口全体が異常に乾燥してしまう病気のことです。
ドライマウスともよばれます。
『異常に』乾燥する病気なので、緊張感に伴って感じるお口の乾きや、マラソンなど運動をした際に生じるお口の乾燥感は含まれません。
口腔乾燥症は、唾液の量が減少するのが原因です。
唾液には、お口の汚れを洗い流す働き、抗菌効果のある成分で細菌の繁殖を防ぐ働きなどがあります。
唾液の分泌量が減少すると、歯や粘膜についた汚れが洗い流されにくくなったり、細菌が繁殖しやすくなったります。
そのため、口臭が生じます。
義歯
義歯とは入れ歯のことです。
入れ歯は、食事をするとどうしてもその構造上、内側に食べカスが入り込んでしまいます。
また、食事の後にきれいに洗っておかなければ、表面に白いぬるぬるした汚れが付着してくるようになります。
これら食べカスや表面の汚れはニオイを発します。
すなわち、適切にきれいな状態にしていない義歯は、口臭の原因となるのです。
悪性腫瘍
お口の中にも悪性腫瘍は生じます。
舌ガンや歯肉ガンが有名ですが、それ以外の悪性腫瘍もあります。
悪性腫瘍が発生すると、その中心部は壊死して陥没します。
壊死した部位からは、腐敗した様なガン独特のにおいが発生します。
内科的疾患
糖尿病や腎臓病になると、独特の口臭が生じることが知られています。
とくに糖尿病のにおいは、化学物質のアセトンに似たにおいであるため、アセトン臭という名称が付けられているほどです。
アセトン臭は、糖尿病の1症状として明記されています。
歯医者さんでの口臭の治療法
虫歯治療
口臭が虫歯によって起こっている場合は、虫歯の治療を行ないます。
虫歯が小さいなら削って詰めればいいのですが、大きな虫歯であれば歯の神経の治療をしなければならなくなります。
歯周病治療
歯周病が原因で口臭が起こっているなら、歯周病の治療を行ないます。
歯石を取り除き、歯の表面をつるつるした状態になるまできれいにします。
歯科医院できれいな状態に出来ても、日常の歯みがきがきちんと出来ていないと、再び歯肉が腫れて口臭が生じます。
そのため歯みがきの方法だけでなく、適した歯ブラシの形状や大きさ、デンタルフロスや歯間ブラシなどの歯ブラシ以外の歯みがき道具を説明し、最適な道具や方法で歯みがきが出来るように指導します。
口腔乾燥症治療
唾液の分泌量が減少している場合は、唾液の分泌を促進する作用のある薬を処方します。
しかし、この薬が効果を発揮して唾液の分泌量が増えるのには時間がかかります。
その間は保湿剤配合うがい薬や保湿スプレー、保湿ジェルを使用して、お口の中を潤し、乾燥を防ぐようにします。
義歯の管理
義歯の汚れを認める場合は、歯科医院で義歯をきれいに洗浄するだけでなく、義歯の清掃、取扱いなどを説明し、自宅でもきれいに保つことが出来るようにします。
義歯洗浄剤の使用を勧めることもあります。
治療後でも口臭が気になるケース
二次カリエス
二次カリエスとは、一度治した虫歯が同じ場所から再発してしまうことです。
被せものや詰めものの内部で虫歯が再発すると、そこは被せものや詰めものが外れない限り、歯みがきが出来ない場所になります。
そして、口臭が発生するようになります。
歯みがき不足や義歯の清掃不良
歯周病の治療で、歯科医院で歯をきれいな状態にまで磨いても、自宅できれいに磨いていないと歯や歯肉に磨き残しやプラークがたまるようになります。
プラークはやがて石灰化し歯石に変わり、歯肉炎や歯周炎を再発させます。
義歯もきれいにした当初はいいのですが、手入れを怠ると表面に汚れが再びついてきます。
こうして、歯みがき不足や義歯の清掃不良から再び口臭が生じます。
内科疾患
口臭の原因がお口になく、糖尿病などの内科疾患が原因の場合はお口の処置では改善しません。
原因となる疾患の治療を、内科などで受けるようにしてください。
食後や起床後の口臭
食事の後の口臭や朝起きたときの口臭は、生理的口臭といい治療対象の口臭には分類されません。
生理的口臭も、お口や歯の治療をしてもなくなりません。
口臭を一時的に抑える方法
デンタルリンス
歯みがきの際にうがいをしますが、このときデンタルリンスを使ってうがいをするのも口臭を抑えるひとつの方法です。
歯科医院で処方されるうがい薬には、お口の中を清潔にする作用があるものもあります。
ドラッグストアで販売されているデンタルリンスにも、口臭を抑える作用のあるものがあります。
こうしたデンタルリンスを使ってみるのもいいでしょう。
ガムを噛む
ガムを噛むと唾液の分泌が促されます。
唾液の作用で細菌の繁殖を抑え、汚れを洗い流して口臭を抑えることが出来ます。
口が乾いて口臭がする様なときは、より効果的です。
口臭予防効果のある歯磨き粉
口臭を抑える薬効成分の配合された歯磨き粉を使って歯を磨くのもいいでしょう。
まとめ
以上、いかがでしたでしょうか。
口臭は嫌なものですので、もちろん無いに越したことはありません。
口臭の原因のひとつに虫歯がありますが、これを放置すると歯に深い穴が生じます。
この穴に食べカスが詰まったり、深くなったがために歯の神経が壊死してしまったりして口臭が生じるのです。
虫歯以外にも、歯周病や口腔乾燥症など口臭をもたらす原因はいくつかあります。
虫歯や歯周病など口臭の原因となる病気を適切に治療して、口臭を無くすようにしましょう。
参考文献
「口腔外科学 医歯薬出版株式会社」
「ドライマウス診療マニュアル 永末書店」
「必修内科学 南江堂」
「医学大辞典」