ふとお口の中を鏡で見た時に、ご自分の歯茎や粘膜が白くなっていたらとても気になりますよね。
実はこの原因には、取返しのつかなくなる重病の可能性を秘めているものまであるのです。
いずれにせよ、早期発見、早期治療は鉄則です。
今回は、歯茎や口内の粘膜が白くなってしまう8個の原因と対処法を、口腔外科医の専門的知見から解説いたします。
アフタ性口内炎
口内炎とは、歯周炎や歯髄炎、智歯周囲炎など、お口の中に出来た炎症の総称です。
その中でもアフタ性口内炎とは、お口の粘膜に生じる小さな円形の炎症のことで、一般的な口内炎と言えばこれを指すことが多いです。
原因
栄養状態の悪化や、寝不足や疲労の蓄積、ストレスなど生活習慣の乱れなどにより、免疫力が低下すると発症すると考えられています。
症状
歯茎をはじめとして舌や唇など、お口の中の粘膜ならどこにでも生じます。
周囲が赤くなった小さな円形の潰瘍で、表面が白、もしくは黄色い膜に覆われています。
触れると痛みがあります。
また、刺激の強い食べ物が触れるとしみて痛くなります。
対処法・治療法
口内炎が出来たときは歯科や歯科口腔外科を受診したらいいでしょう。
通常は、10日から14日ほどで治ります。
治療法は、軟膏を処方することが多いですが、炎症を抑える働きのあるうがい薬も効果的です。
白板症(はくばんしょう)
白板症とは、他のいろいろな病気の特徴に合致しない白色の板状、もしくは斑点状の病変のことです。
原因
タバコが大きく関与していることがわかっています。
喫煙者の方が非喫煙者と比べて発症率が6倍と高くなっており、特に葉巻よりも紙巻きたばこやパイプを使っていると高頻度に発症します。
症状
肉眼的に、お口の粘膜に白色の病変を認めます。
その形態から、
- 白斑型
- 紅斑混在型
- 丘型
- 疣型
の4種類の病状に分類されます。
痛み等の自覚症状はなく、周囲の健全なところとの境界ははっきりしています。
白板症のうち3%から6%が悪性転化、つまりガン化するとされています。
この傾向は喫煙者で高く、特に舌に生じた白板症はガン化しやすいので注意が必要です。
対処法・治療法
歯茎をはじめとするお口に生じた白板症は、歯科口腔外科が専門の診療科です。
白板症の治療法は、経過観察か切除術、薬物治療です。
病理組織の検査をして、問題がなさそうなら経過観察が選ばれます。
もし、異形成という細胞が正常から悪性の中間の様な状態や、悪性の細胞が認められた場合は切除術になります。
薬物治療では、ビタミンA製剤が使われます。
最近では凍結療法やレーザー切除術も行なわれています。
いずれの方法で取り除いても、再発する可能性は否定できません。
口腔扁平苔癬(こうくうへんぺいたいせん)
口腔扁平苔癬とは、お口の粘膜の細胞の角化が正常の細胞よりも強く現れる病変のことです。
原因
原因はよくわかっていませんが、カンジダ菌や糖尿病、C型肝炎が関係していると考えられています。
金属アレルギーとの関連性を示唆する報告例もあります。
症状
口腔扁平苔癬は歯茎にも起こりますが、よくみられるのは頬の粘膜です。
その主な症状は、白いレース状もしくは網目状とよばれる不定形な模様です。
白色レース斑という典型的な症状であれば、病理組織検査が行なわれないこともあります。
レース斑が生じても、しこりや潰瘍は形成されませんし、痛みなどの自覚症状もありません。
対処法・治療法
口腔扁平苔癬の専門診療科は、歯科口腔外科です。
治療法は、経過観察か薬物治療です。
薬物治療では、
- グリチルリチン製剤という肝機能を改善させる薬
- ビタミンA製剤
- セファランチンという造血薬
- アズレンスルホン酸などの炎症を抑える効果のあるうがい薬
などが処方されます。
切除術などの外科処置が行なわれることは、あまりありません。
口腔カンジダ症
カンジダとは、真菌とよばれる病原微生物のことで、いわゆるカビの菌のことです。
口腔カンジダ症は、カンジダによって起こる感染症のことです。
鷲口瘡(がこうそう)ともよばれます。
原因
口腔カンジダ症の原因は、お口の中の微生物であるカンジダ菌です。
代表的なカンジダ菌はカンジダ・アルビカンスですが、カンジダ属には他にもいろいろな種類の真菌がいます。
カンジダ菌は、常在菌とよばれる菌でもあり、普通に誰のお口の中にも存在しています。
通常は発症することはありませんが、免疫力が低下すると発症します。
免疫力が低下する原因としては、
- 体調の悪化
- 糖尿病
- AIDSなどの病気
- 免疫抑制剤の投与
など、いろいろあります。
症状
歯茎をはじめとするお口の粘膜に、拭うと簡単に剥がれる白い斑点状の付着物を認めます。
対処法・治療法
口腔カンジダ症の専門診療科は歯科口腔外科です。
口腔カンジダ症を認めた場合は、経過観察とするか、薬物治療と口腔ケアで改善を試みます。
一般に乳幼児の口腔カンジダ症は、自然に治癒することが多いので経過観察となります。
薬物治療ではアンホテリシンBという抗真菌剤が効果的です。
お口の中の状態が不潔であれば、カンジダ症の改善が難しいので口腔ケアが欠かせません。
そしてお口の中をきれいな状態にして、カンジダ菌の増加を防ぎます。
義歯性潰瘍
義歯性潰瘍とは、入れ歯の当たりによってお口の粘膜に生じた傷のことです。
原因
入れ歯の当たりが、きつすぎることです。
症状
入れ歯の当たりが、きつくなっているところの歯茎に傷が生じます。
傷の状態は、白いカサブタ状のものから、赤い口内炎状のものまでいろいろあります。
入れ歯を入れている間は痛いですが、外すと痛みは消えます。
対処法・治療法
入れ歯によるものなので、歯科を受診するといいでしょう。
歯科医院では、入れ歯の調整を行ないます。
すなわち入れ歯の当たりが強いところを削って当たりを弱くするのです。
傷が大きい、もしくは深い場合は、軟膏を処方することもありますが、軟膏だけで治ることはありません。
上皮真珠(じょうひしんじゅ)
原因
上皮真珠は乳歯を作る過程で残った組織です。
通常は自然に吸収されてなくなっていくのですが、それが吸収しきれずに表面に現れたものです。
症状
生後3~4ヶ月までの乳歯が生えてくる前の赤ちゃんの歯茎に、光沢のある白い球形の塊が生じます。
これが真珠のように見えるので上皮真珠と名付けられました。
大きさは1~3mmほどです。数はそれほど多くはなく、たいていが数個です。
もちろん、それよりも多いこともあります。
真珠と名前がつきますが、それほど硬いものではなく痛みもありません。
対処法・治療法
上皮真珠が気になる場合は、歯科や歯科口腔外科で診てもらってください。
治療に関しては、特に何も行なわれません。
そのままにしておくと自然に吸収されてなくなっていくものなので、通常は経過観察になります。
フォーダイス斑
フォーダイス斑とは、お口の粘膜に生じる皮脂腺のことです。
本来、皮脂腺は皮膚にあるものです。
もともとお口には皮脂腺は存在していないものなので、異所性といわれます。
原因
フォーダイス斑が生じる原因はよくわかっていません。
症状
主に頬に多いのですが、舌以外のお口の粘膜に境界がはっきりとした黄色から乳白色の斑点がみられます。
1個ということはなく、通常、複数個存在してます。
対処法・治療法
もし気になるのなら歯科を受診することをお勧めします。
フォーダイス斑は経過観察となります。摘出術等積極的な治療は行なわれません。
薬の影響
歯科治療で使う薬剤には、歯茎に触れると歯茎が白くなってしまうものがあります。
原因
コンポジットレジンとよばれるプラスチック製の詰めものをするときに使う接着剤や、ホワイトニングの薬剤が歯茎に触れることです。
症状
治療中の歯に近いところの歯茎に白い模様が生じます。
少ししみる程度で、強い痛みを生じることは稀です。
対処法・治療法
歯科治療中に生じるものなのですが、通常はそのままで経過観察です。
しばらくすると自然と治ってきます。
まとめ
歯茎は、通常はピンク色をしています。
炎症を起こして腫れると赤くなってくるのですが、中には赤ではなく白色に変化してくる病態もあります。
今回は、歯茎が白く変化する病態を紹介しました。
これらは基本的には、歯科や歯科口腔外科が診療科となると思っていただいて間違いありません。
もし、歯茎に白い病気が生じたときは、放置せず歯科や歯科口腔外科を受診することをお勧めします。
参考文献
「口腔外科学 医歯薬出版株式会社」