食後にやってくる胃の痛み、とても辛いですよね。
しかしある程度時間が経つと痛みが和らぐため、ついついそのまま放置してしまいがち。
今回はそんなあなたの為に、消化器内科にて多くの症例に関わってきた医師が、その7つの原因と対処法について徹底解説いたします。
これを参考に、一度病院で診察を受けてみてはいかがでしょうか。
急性胃炎
急性胃炎とは
急性胃炎とは、胃粘膜の充血や浮腫(むくみのこと)、変性などを生じる胃の急性炎症のことです。
急性胃炎の症状は、原因があってからごく短時間で食欲不振があらわれます。
そしてお腹の不快感や悪心、嘔吐をきたし、痛みを生じます。
痛みの程度は、いろいろで不快感程度から激痛までさまざまです。
これらの症状は、数時間から数日間続きます。
激症例では死亡に至る事もあります。
よく似た病気に急性胃腸炎というものがありますが、これは急性の下痢のことで急性胃炎とは異なります。
対処法
原因が明白なら、原因の除去から行ないます。
基本的な処置では、まず1〜2回ほど食事を抜いて胃の安静を図ります。
症状が楽になれば、軟らかいものから食事を再開します。
長期の絶食や、軟らかいものばかり食べるのはダメです。
痛みなどの症状に応じて、胃酸を抑える薬や胃粘膜の保護薬を投与します。
診療科
急性胃炎で診療を受けるのは内科です。
特に消化器内科が詳しいです。
慢性胃炎
慢性胃炎とは
慢性胃炎とは、1ヶ月以上の長期間にわたって急性胃炎と同じような病態が、治癒と再発を繰り返しながら継続している病気のことです。
急性胃炎との違いは、単に病気がどれくらいの期間続いているかという時間的な違いしかありません。
したがって、基本的な病態は急性胃炎とほぼ同一で、慢性胃炎という診断がくだされることは最近ほとんどなくなりました。
慢性胃炎の症状は、急性胃炎とほとんど同じです。
対処法
急性胃炎と同じく薬物治療が有効です。
特に、胃酸抑制剤や胃粘膜保護剤が効果的です。
診療科
こちらも受診するべきは内科です。
やはりその中でも、消化器内科が専門になります。
胃潰瘍
胃潰瘍とは
強い酸性である胃液によって、胃に潰瘍を形成する病気のことです。
胃の中では、胃酸やペプシンという攻撃因子と胃粘膜の血流などの防御因子がバランスをとり、胃粘膜を守っています。
ところがこのバランスが崩れると、胃粘膜が障害されて潰瘍を形成します。
バランスを崩して胃潰瘍を形成する因子としては、ヘリコバクター・ピロリという胃粘膜に生着している細菌が有名です。
その他、ストレスや非ステロイド性消炎鎮痛薬とよばれる痛み止め薬も発症因子にあげられます。
対処法
胃潰瘍の治療は、薬物治療が第一選択です。
胃酸を抑える薬やヘリコバクター・ピロリの除菌目的に抗菌薬が処方されます。
胃出血や穿孔などの重症な合併症をきたさない限りは、日常生活に特に制限はありません。
潰瘍がよほど大きい場合を除いて、運動もやめる必要はないです。
食事に関しても同様で、厳重な制限は必要ではありませんし、かえって有害となることも多いです。
アルコールも、ビールなどの炭酸の入ったものでなければ制限はありません。
また食間に牛乳を飲むと、胃酸の中和効果と胃の運動低下効果があるのでとても有用です。
食間の空っぽの胃は必ずしも休んでいるわけではなく、空っぽだとかえって収縮を起こすからです。
その他の注意点としてはストレスがあります。
日常ストレスをためないように注意しましょう。
診療科
こちらも内科です。
そしてはやり、消化器内科が専門になります。
長期に及ぶ胃潰瘍で外科治療が必要な場合は、消化器外科が手術を行ないます。
胃けいれん
胃けいれんとは
胃けいれんとは、胃壁の筋肉が異常に緊張を起こすことです。
実際に痙攣しているわけではないのですが、そう感じさせるほどにつらい症状を呈します。
胃けいれんを起こすと、数分から数十分もの間、みぞおちのあたりに差し込むような痛みを感じます。
胃けいれんを起こす原因は、炎症などの刺激から精神的なものまでいろいろあります。
もちろん病気によって起こることもあり、
- イレウス
- 消化性潰瘍
- 急性膵炎
- 急性虫垂炎
などがそれに該当します。
対処法
胃けいれんは病気ではありません。
ストレスや過緊張が原因となって起こった場合には、ストレスや緊張感を解きほぐすことが大切です。
イレウスや消化管潰瘍などの病気が原因のときは、原因疾患の治療が必要です。
診療科
こちらも受診するべきは内科になります。
胃酸過多
胃酸過多とは
胃酸過多は、過酸(かさん)ともよばれ、胃酸の分泌量が異常に増えた状態のことを指します。
過酸を起こすと、胃酸の分泌量が正常範囲を超えているわけですが、必ずしも病気とは限りません。
過酸を起こして、かつ何らかの病的症状が現れたもののみを過酸症と呼び、病気とみなします。
過酸症の場合は、食道、胃、十二指腸にびらんや潰瘍を形成します。
びらんとは粘膜が欠損した状態、潰瘍はびらんよりも深く、粘膜の下の組織まで欠損した状態のことです。
胃酸過多を起こす原因は、胃粘膜の壁細胞が増えたり、敏感になったりすることです。
対処法
過酸症になれば、消化性潰瘍の治療が行なわれます。
胃酸過多を抑えるには、胃酸の分泌抑制薬が効果的です。
診療科
こちらの症状も内科、もしくは消化器内科を受診しましょう。
ストレス潰瘍
ストレス潰瘍とは
ストレスとは、生体内のひずみのことです。
これが原因になって生じた消化性潰瘍のことを、ストレス潰瘍といいます。
人間は自身をとりまく周辺環境との相互的な関係によって、精神的な緊張や葛藤、肉体的な緊張をきたします。
それだけでなく、ケガや病気、手術など、いろいろな刺激も受けます。
これらがストレスとして、われわれにいろいろな影響を及ぼしてくるのです。
ストレスと自律神経
人間が生きていく上で必要な機能、たとえば心臓を動かす、食べ物を消化するなど、これらの働きは自律神経という交感神経と副交感神経から成り立っている、生命維持に関係する神経の働きによって制御されています。
呼吸などごく一部をのぞいて、自分の意識では自律神経をコントロールする事は出来ません。
仮に身体が活発に活動したり、ストレスを受けたりすると交感神経が優位になります。
反対に休息時や食後などは副交感神経が優位になります。
このように交感神経と副交感神経は交互に働き、同時に優位になることはありません。
ところが、ストレスを受け続けていると、副交感神経が優位になるべきときもそうはならなくなる、つまり自律神経の働きが乱れてしまいます。
これは、胃に対しては
- 胃酸の分泌が増加したり
- 蠕動運動が促進されたり
- 防御因子の量が低下したり
というように現れてきます。
その結果、胃などに消化性潰瘍を形成します。
対処法
ストレスの原因には、
- 寒冷や騒音などの物理的要因
- 薬やビタミン不足などの化学的要因
- 受験や試合などの精神的要因
- 感染症などの生物的要因
などがありますが、これらを取り除いてストレスの緩和を図ります。
診療科
内科や消化器内科でもいいのですが、精神的ストレスという心因性の原因によって起こっているときは心療内科もいいでしょう。
胃神経症
胃神経症とは
胃そのものには異常がないのにも関わらず、心理的な原因によって胃の機能が異常をきたし、胃の不快感や悪心・嘔吐、お腹の不快感などが生じる病気です。
対処法
不安感や抑うつ状態などの解消を図ります。
一例を挙げると、胃がんを心配し過ぎて胃症状を訴えるような場合に、精密検査を行なって胃がんでないと説明すると、胃の症状がすーっと解消したりします。
そこで、まずは胃に問題がないことを検査で確認します。
診療科
胃神経症で受診するべきは内科です。
心身医学的な対応が必要な場合は、心療内科がいいでしょう。
まとめ
食後に胃が痛くなる原因はいろいろあります。
したがって胃が痛む場合は、まずは病院で原因を探る事が大切です。
そして、原因に応じた治療を受けるようにしましょう。
その場合の診療科は内科ですが、とくに消化器内科が詳しいので、消化器内科がある医療施設なら消化器内科を選ぶ事をおすすめします。
参考文献
「医学大辞典 南山堂」
「必修内科学 南江堂」