何だか歯茎がムズムズして、かゆみが気になることはありませんか?
歯茎は体の表面に出ている皮膚と違い、直接かくことができないので、独特の辛さがありますよね。
今回は、歯茎の痒みの原因を9つ網羅して、それぞれ対処法や治療法をご紹介していきます。
この記事を参考に、なるべく早急に専門の医療機関にて診察を受けてください。
歯周病
歯周病とは、歯周組織に生じる病気です。
歯周組織は、
- 歯肉
- 歯槽骨
- セメント質
- 歯根膜
の4つの組織から構成されている、歯を支えている組織のことです。
症状
歯周病は、歯肉炎と歯周炎にわけられます。
歯肉炎は、症状が歯茎にだけ生じた病態です。
歯周炎は症状が歯肉炎から進行し、残る歯周組織に炎症が広がった病態です。
歯肉炎も歯周炎も歯茎の炎症を伴います。
歯肉の炎症とは歯茎の腫れや出血、痛みなどですが、症状が軽度であれば、痛みではなくかゆいような違和感であることもあります。
対処法
かゆみ程度の違和感であれば、抗菌薬の内服は必要ありません。
多少の出血はするかもしれませんが、歯ブラシだけでなく、歯間ブラシやデンタルフロスも使ってケアを試みましょう。
こうして歯をしっかりと磨いていれば、歯肉が引き締まり、かゆみも消えていきます。
治療法
歯科医院では、歯石を取り除くスケーリングやルートプレーニングを行ない、歯の周囲の磨き残しや炎症を起こしかねない要素を取り除き、歯をきれいな状態にします。
また、再発を防止するために歯みがきの効果的な方法を説明します。
むし歯
むし歯は、むし歯菌が産生する酸によって、歯が溶かされてしまった状態のことです。
症状
むし歯になると、歯に穴があいてしまいます。
穴の深さによって症状は異なります。
穴の深さが浅い場合は、特に痛みを感じることはありません。
もちろん歯の神経に近いくらい深くなれば痛みを生じますが、少し深くなった程度では、痛みというほどではない違和感が生じるようになります。
対処法
一番は歯科医院を受診することですが、仕事や学校などですぐに受診できないときは、市販の痛み止めを使うことをお勧めします。
また、熱いものや冷たいものを控えるようにした方がいいでしょう。
治療法
歯茎のあたりがむずがゆくなる程度のむし歯であれば、神経を取り除いたりする必要はありません。
コンポジットレジンとよばれるプラスチック製の詰めものや、金属製の詰めものをする治療で治します。
親知らず
親知らずは、第三大臼歯ともよばれる最も奥に生えてくる歯です。
智歯ともいいます。
症状
親知らずは最後に生えてくる歯なのですが、生えてくる頃には顎の骨の成長が終わっており、親知らずが生えてくるスペースが足りない場合が大半です。
そのために、斜めに生えてきたり、埋まったままになったり、上下逆さまに生えてきたりします。
すると、歯みがきがしにくくなるので、炎症を起こしやすくなります。
これを智歯周囲炎といいます。
ひどい場合は、顔が腫れたり口が開かなくなったりしますが、軽い症状なら歯茎のかゆいような違和感ですむこともあります。
対処法
歯みがきしにくい生えかたに原因があります。
親知らずが見えているのなら、しっかりていねいに磨くようにしましょう。
体調が悪くなると、免疫力が低下して腫れてきやすくなります。
日頃から体調管理をしっかり行ない、睡眠時間を確保して疲れがたまらないようにしましょう。
治療法
歯科医院では、智歯周囲炎を認めた場合は、抗菌薬を使って炎症の緩和を図ります。
症状が強い場合は、点滴することもあります。
炎症が落ち着いた後は、原因となった親知らずを抜歯する場合が大半です。
根尖性歯周炎
根尖性歯周炎とは、歯の根の先に膿がたまってくる病気のことです。
症状
レントゲン写真を撮影すると、歯の根の先に黒い膿の袋が認められます。
通常は、痛みや腫れなどの自覚症状がない場合が大半です。
体調が悪くなったり、疲れがたまったりした時に、免疫力が低下すると腫れてくることがあります。
また、膿の量が多くなり、骨の中にためきれなくなった時など、歯肉から膿が出てくることがあります。
そんなときは、歯茎に瘻孔(ろうこう)とよばれる膿の出口ができます。
普段は痛み等を生じない根尖性歯周炎ですが、腫れたり痛くなったりしてくる前の段階や、瘻孔が形成された段階などで、かゆいような変な違和感が生じることがあります。
対処法
歯科医院でみてもらうのが一番ですが、体調を管理して免疫力が下がらないようにすることも大切です。
治療法
歯科医院では、被せものが入っている場合は、まず被せものを外します。
そして、歯根から膿の袋に消毒薬を入れて消毒します。
これを数回繰り返し、きれいになったところで歯根の内部を専用の詰めもので埋め、被せものを装着して再び噛めるようにする治療を行ないます。
アレルギー
アレルギーとは、体が備えている免疫があるものに対して、異常にそして過剰に反応を示すことです。
症状
お口の中に、歯茎がむずむずするようなかゆみをもたらすアレルギーとしては、金属アレルギーがあげられます。
金属アレルギーとは、金属に対しておこるアレルギー反応のことです。
基本的にアレルギー反応は、タンパク質に対して起こるものです。
金属はもちろんタンパク質ではありません。
金属アレルギーでは金属にタンパク質が結合し、それに対してアレルギー反応が起こります。
歯科で使われる金属にアレルギー反応が現れる場合、まずは被せものの周囲の歯茎の発赤や腫れ、違和感から始まります。
症状が軽い場合は、ムズムズするような違和感であることもあります。
対処法
まずは歯科医院を受診して相談する方がいいでしょう。
やはり金属アレルギーが疑われると結論が出た場合は、皮膚科を受診してアレルギーの検査を受けてください。
治療法
歯科医院での治療は、基本的には原因となっている金属を含んだ被せものを取り除いて、セラミック製の被せもの等、金属を使っていないものに交換する治療になります。
歯ぎしり・食いしばり癖
通常、上下の歯は当たっていません。
食事以外のときは歯と歯の間には隙間があります。
ところが歯ぎしりや食いしばりをすると、歯と歯が常に当たった状態になります。
歯と歯は当たっていない状態が正常なので、たとえ下の歯で上の歯を触っているような軽い接触であっても、歯や歯周組織には大きな負担となります。
症状
軽い症状であれば、歯が浮いた感じになったり、歯茎が炎症を起こしてむずがゆくなったり赤くなったりする程度です。
症状が進行すれば、歯が痛くて噛めなくなったり、顎が痛んできたりします。
対処法
歯ぎしりや食いしばりをする背景には、ストレスがかかっていることが多いです。
ストレスを感じることがあるなら、ストレスを取り除くようにしましょう。
治療法
歯ぎしりや食いしばりのくせがある場合、歯科医院ではマウスピースを作成し、歯や歯周組織にかかる負担を軽減します。
ストレス
ストレスを感じると、意識しないうちに食いしばったり、また唾液の分泌量が減少して、お口が乾燥傾向になったりします。
症状
食いしばりに関しては前述した通りです。
唾液には、
- お口の中をきれいに洗い流す自浄作用
- 細菌を抑える抗菌作用
- 傷を治す作用
- むし歯を予防する作用
- 粘膜を保護する作用
などいろいろな作用があります。
唾液の分泌量が減少すると、こうした作用が全般的に低下します。
すると、歯周病の原因となる細菌の活動性が活発化し、歯茎が炎症を起こしやすくなります。
しかも、傷んだ歯茎を修復する作用も低下してしまいます。
歯茎が炎症を起こす初期段階の症状として、歯茎のむずがゆいような違和感を生じることがあります。
対処法
ストレスのない、リラックスした生活をおくることが大切です。
また、ストレスを感じたときには発散させ、ため込まないようにしましょう。
治療法
ストレスが強い場合は、抗不安薬などの薬物治療が行なわれることがあります。
多くの場合、ストレスによるお口の乾燥はストレスの緩和とともに解消されますが、唾液分泌が別の原因による場合は、唾液の分泌を促進する薬を投与したりします。
ヘルペスなどのウイルス
ウイルスというとインフルエンザ等いろいろありますが、口にもウイルスが感染することがあります。
お口に関係するウイルスといえば、ヘルペスウイルスやコクサッキーウイルスがあげられます。
症状
まず最初は、発赤や小さな水疱から始まります。
数日で水疱は崩壊し、びらんという口内炎のような状態になります。
そして数日でかさぶたが出来て治っていきます。
水疱や発赤が生じる前の段階で、歯肉などお口の中がかゆくなってくることがあります。
対処法
ヘルペスウイルスによる症状が現れた時は、たいてい体が弱っているときです。
これの一番の対処法は、体を休めたり、睡眠をしっかりとって疲れをとり、栄養なあるものをしっかり食べることです。
治療法
ヘルペスウイルスに感染したかどうかの検査が必要です。
検査法は血液検査が一般的です。
歯科医院では、ヘルペスウイルス感染症に対しては、アシクロビルという抗ウイルス薬が処方されます。
びらんになっている部分が痛む場合は、抗ウイルス薬の軟膏が使われることもあります。
薬の副作用
実は、薬の副作用で歯茎が腫れてくることがあります。
これを歯肉肥大といいます。
歯肉を腫らす代表的な薬として、高血圧症の治療薬であるカルシウム拮抗薬や、けいれんを抑える抗てんかん薬などが知られています。
症状
歯肉肥大が起こると、歯と歯の間の歯茎を中心とする歯茎の腫れが起こります。
歯茎が肥大するまでの前段階では、歯茎のかゆみのような違和感や発赤を認めます。
対処法
日頃から歯と歯の間まできれいに磨いていると、比較的生じにくくなる傾向があります。
歯ブラシだけでなく、歯間ブラシやデンタルフロスを使ってていねいに歯を磨くように心がけましょう。
治療法
原因となっている薬剤の使用を中止したり、変更したりするのがいいのですが、なかなか難しいのが現実です。
そこで歯科医院では、歯周病の治療でもある歯石の除去や歯の表面の清掃を行い、お口の環境をきれいにするようにします。
また、自宅での歯みがきがきれいにできるよう、歯みがきの方法の指導も行ないます。
自宅でのお口のケアと歯科医院でのケアの二人三脚で歯肉肥大を改善させます。
こうしてもなかなか改善しにくい、もしくは肥大したために歯みがきそのものが難しい場合は、肥大した歯茎を切除することもあります。
歯茎がかゆくてもやってはいけないNG行為
歯茎のかゆみが我慢できない時もあるでしょう。
しかしそのような時でも、やってはいけない行為というものがあります。
ここでいくつかご紹介しておきましょう。
放置する
歯茎のかゆみは、何らかの変化が起こっているサインです。
例え症状が痛み止めを飲むほどではなくても、放置することはよくないです。
歯科医院で診てもらいましょう。
指先で触る
かゆくなると、指先で触りたくなりますが、弱っている歯茎から指先の細菌が侵入し、炎症がかえって悪化する可能性があります。
爪楊枝でつつく
爪楊枝で、つつくこともやめましょう。
歯茎を傷つけて、炎症を拡大させる原因になります。
まとめ
歯茎のかゆみをもたらす原因は、いろいろあります。
対処法や治療法は、それぞれ原因によって異なります。
歯茎にかゆみのような違和感が生じたときは、早めに歯科医院で持てもらうようにしましょう。
参考文献
「歯周病学 クインテッセンス出版株式会社」
「口腔外科学 医歯薬出版株式会社」
「口腔外科学 口腔保健協会」