涼しい季節になってくると食べたくなる海の幸と言えば、やっぱり牡蠣ですよね。別名「海のミルク」と呼ばれるくらい濃厚な味わいは、好きな人にはたまりませんよね。
8月くらいまでが牡蠣の産卵期なのですが、それを終えると身は太りはじめ、あの濃厚な味わいを楽しめる季節がやってきます。
ただし、ここで怖いのは牡蠣による食中毒です。折角美味しい食材を楽しんでも、腹痛に苦しんだり入院になったりしたら元も子もありません。
とっくに気を付けたいのが、牡蠣による食中毒の代表的な原因とされるノロウイルスです。
ここでしっかりノロウイルスの予備知識を身につけて、心おきなく旬の幸をいただきましょう!
牡蠣の種類によって旬が違う
日本で食する代表的な牡蠣は「岩牡蠣」と「真牡蠣」です。
どちらの牡蠣も産卵期は夏のシーズンですが、岩牡蠣は産卵期の6月から8月でも味が落ちずに旬を迎えます。
それに対し真牡蠣ときたら、産卵期には痩せ細り、味が落ちてしまうのですね。
真牡蠣を美味しくいただけるシーズン、つまり「旬」は、10月から3月までと言われています。
その中でも特にピークを迎えるのは、1月から3月にかけての最も寒い時期なのです。
この頃になると、牡蠣の旨味成分であるグリコーゲンを十分に蓄えるので、最も美味しくなるんですね。
牡蠣で食中毒になる原因とは?
俗にいう「生ガキ」とは 岩牡蠣を生で食べることを指します。ですから「カキを食べて当たった」と言ったら、岩牡蠣で当たったことになります。
裏を返せば、当たることもあるけれど「生で食べることもできる」とも言えますよね。
それに対して真牡蠣は、基本的に生では食べません。と言うことは、生で食べるにはとても危険ということを意味するのです。
真牡蠣で食中毒になる原因の大半は「ノロウイルス」によるものと考えられます。
その他にも「腸炎ビブリオ」などが原因とも考えられますが、これは春から夏にかけて症状が出ることが多いです。
ですから真牡蠣による食中毒であれば、そのシーズンから考えてノロウイルスが最も疑わしいのです。
鮮度とは無関係!気を付けるべき牡蠣とは?
牡蠣の鮮度が良いからと言ってノロウイルスは心配ないかというと、必ずしもそうとは言えません。
というのも、牡蠣が原因でノロウイルスに感染しても特に業者対して罰則はないのです。
本来は、保健所が指定した海域もしくは、牡蠣をしっかりと浄化してから出荷すれば問題はありません。
しかし現実は、浄化が不十分な牡蠣がその中に混じって出荷されていることがあるのです。
その行いに対して、広島県だけが唯一、法的措置を実施しています。
しかし、その広島県でも徹底的に行なっている訳では無いようなのです。
牡蠣を出荷して良い業者の定義として、保健所の許可があり且つ指定した浄化槽で牡蠣を浄化している業者です。そういった業者を選ぶ事で、ノロウイルスの感染を遠ざけることが出来そうです。
しかしながら、その定義が曖昧なのです。
そしてその業者が、保健所の認可した海域で獲っているのか、またそれを規定に沿ってしっかり洗浄しているかどうかは、一般人では分かりようもないことなのです。
先ほどの話にも出てきましたが、牡蠣には生食用の岩牡蠣と加熱用真牡蠣の二通りあります。
もしこれを知らないで、加熱用の真牡蠣を生食用として食べてしまうと、ノロウイルスに感染するリスクが一気に高まります。
ここに新鮮かどうかは関係ありません。生食用か加熱用かを選んで購入するしか、ノロウイルスを防ぐ手立てはないと言っていいでしょう。
このため、鮮度が良いから大丈夫という認識は持たないほうがよいのです。
安全性の高い牡蠣の調理方法
ノロウイルスは牡蠣の中心部の温度が85度以上になってから、1分半以上加熱しないと死滅することはありません。思っているよりも十分に加熱するように心がけてください。
また、調理した器具については他の食材をする調理道具と分けて行うことも大事です。ナトリウムなどを使って85度以上で消毒し、また手洗いを十分行なって調理に当たるようにしてください。
これを徹底して行なうか否かで、美味しく牡蠣を楽しめるかどうかが決まってきます。
ノロウイルスの特徴
さてここからは、ノロウイルスとはどのような特徴を持つものなのか?この辺を詳細にお伝えしていきましょう。
ノロウイルスの感染経路
ノロウイルスについては色々と言われていますが、感染経路は主に以下の3パターンになります。
食べ物からの感染
まずは食べ物からの感染するケースです。
例えば、2枚貝などをしっかり加熱しなかったことにより、ノロウイルスが死滅しないまま汚染された食品を食べたことによる感染ですね。
接触感染
ふたつめは、感染者が触れた物に触れてしまう接触感染です。
ノロウイルスは感染しても症状が出ない人もいます。ですから自分でも気付かないうちに、ノロウイルスをばらまいてしまっているケースがあるのです。
例えば、感染して発症中に色々なところに触れてしまい、その個所を別の人が触る事により感染するケースです。
これについては感染者が触ったところは消毒するしかありません。行き届かないところがあるとすれば、そこから感染リスクが高まってくるのです。
嘔吐物などからの感染
そして最後は、感染者の嘔吐物や糞便などからの感染です。
感染者の嘔吐物や糞便が、後に乾いてくると空気中に漂います。それを吸い込んだ別の人が、ノロウイルスに感染するのです。
感染者が快方しても、まだその糞便にはノロウイルスが1週間から1ヶ月ほど残っているようです。そのため誤って触れてしまうと、感染してしまう可能性があるのです。
ノロウイルスの潜伏期間は?
ノロウイルスの潜伏期間は、24時間~48時間ほどになります。
体にウイルスが侵入しても直ぐに症状が表面化することは希で、ある程度の時間をかけて体の中でウイルスが増殖していくのです。
上気道に感染するわけではなく、小腸にウイルスが沈着して増殖を開始します。その後に症状が表面化することにより、ノロウイルスに感染したことに気付くのが一般的です。
大人の場合、食べた物が原因となるケースが多いことがあげられます。子供の場合は、学校や幼稚園での集団感染が発生源となることが多いです。
給食やお弁当などから感染する場合は、感染経路特定も難しいようです。
潜伏期間中でも感染するの?
残念な事に潜伏期間でも、ノロウイルスに感染します。
勿論、発症したときよりも感染するリスクはとても低いですが、可能性として否定は出来ないというのが見解のようです。
ノロウイルスは食べ物を食べることから感染することが第一の原因です。
嘔吐の症状が出ないうちは飛沫感染のリスクは低いですが、潜伏期間であっても便の中には既にノロウイルスが混入しています。
ノロウイルスは小腸に吸収されて感染がスタートしますので、一番色濃くその影響が出るのは便という事になります。
ノロウイルスの潜伏期間である、24時間~48時間を過ぎると症状が現れ始めます。
しかしそれ以前でも既に感染は始まっており、体内では菌が増殖している状態となっているのです。
まずあらわれる初期症状とは?
まず第一に発熱がみられます。熱は37度台で風邪と混同しやすいので注意が必要です。
次にあらわれるのは、嘔吐と下痢の症状です。これらの症状は、初期段階から完治に至るまで発症を続けます。
一見良くなったように見えたとしても、便の中にはノロウイルスの菌がまだ存在しています。最長で、一ヶ月程残っているということもあるそうなのです。
ですので体調が回復して元気になっても、しばらくは2次感染に気を付けながらの経過観察が必要となります。
ノロウイルスの初期の対処法は?
とにかく初期の対処法は、安静にする事が一番です。残念ながら、医療機関に行ったとしてもこれと言った薬やワクチンがありません。
これはノロウイルスの構造が複雑なため、どの薬がどの抗体に合致するのか、実験を繰り返している状況なのです。
そのため、まずは静養を心がけて下さい。あまり吐き気が強い場合には、吐き止めを処方して貰いましょう。
また下痢が酷い場合には、整腸剤を処方して貰い腸内の細菌バランスを調整をして貰うなどの対処が必要です。
場合によっては点滴で栄養補給をして、ノロウイルスと戦うだけの体力を保っておく必要があります。
またどうしても症状が辛い場合には、食事を極力絶ち、胃腸の負担を軽減することも視野に入れなければならないでしょう。
ただし、水分補給は十分におこない、水脱水症状だけは気を付けましょう。
ノロウイルスに感染したら?
ノロウイルスには残念ながら、有効な抗ウイルス剤はありません。そのため、患者の症状に合わせて対応していく対症療法をとっていくしかありません。
乳幼児や高齢者といった、抵抗力の弱い人が感染したときに気を付けたいのが脱水症状です。患者の症状を見ながら、少しずつ水分補給を行いましょう。
また、ひどい下痢の症状を起こしていても、下痢止めの薬を服用するのはおすすめしません。ウイルスが腸管内に停滞して、回復を遅らせる可能性があるからです。
嘔吐物が気道に詰まることによる窒息にも気を付けて下さい。
そしてその嘔吐物にはノロウイルスが含まれている可能性が高いので、素早く処理をして感染の拡大を防ぐことが重要になります。
ノロウイルスで下痢がひどい場合の治療方法は?
ノロウイルスで下痢を起こしている場合は、病院でも経過観察がほとんどです。ですので、あまり食べ物を口にしないという対処法がいいかもしれません。
医療機関でも、整腸剤を処方することはあっても、下痢を止めると言うことは基本的に行ないません。体内から毒性のあるウイルスが出ていけば、下痢は自然と止まるのです。
ただし、脱水症状を避けるためにスポーツドリンクや経口補水液にて、水分補給のコントロールは必要です。
そして、徐々に便の状態が固くなってきたならば、段々と食べ物を固形物に戻していくのがよいでしょう。
ノロウイルスの感染を予防するには?
まず第一に行って欲しいのは健康管理です。
少々体調が良くなくても、どうしても無理をして会社に出勤したり、学校に登校してしまいがちですよね。
ただしノロウイルスは、思っている以上に感染力が強いウイルスです。無理をして会社に出社して、感染を拡大させてしまっては、逆に周囲の人に迷惑をかけてしまいます。
そのためノロウイルスに感染していることが分かったなら、上司や先生に報告して適切に休むことを選択してください。
その他で大事なことは、しっかりと睡眠を取って免疫を上げておくことや、徹底した手洗いの慣行です。
適切な手洗いの方法としては、まず石鹸でしっかりと洗います。その後、流水でしっかり細部まで洗い流します。これを2回ほど繰り返すのです。
特に、手の甲の親指の部分が不十分になりやすいので、そこを意識して洗浄するようにしましょう。
その他のポイントとしては、トイレの徹底的な洗浄が望まれます。
便座にはノロウイルスが付着しているケースが多々ありますので、清掃後さらに除菌するというパターンで感染リスクを下げましょう。
室内のドアノブや手すりにも、ノロウイルスが付着することが多いです。こちらに関しても、まめに除菌洗浄を心がけてください。
これらを徹底すれば、感染リスクはかなり下がるはずです。
まとめ
これと言った対処法がないのがノロウイルスのつらいところ。特に免疫力の低い、お子様や年配の方は早めの対処が大切です。
その中でも注意点をあげるとすれば、
- ノロウイルスは感染力がとても強いので、家族や友人など周囲の人への二次感染を防ぐ。
- 体内から毒素を出すためにおこる、下痢による脱水症状に気を付ける。
- 軽率な自己判断は危険。出来ることならなるべく病院へ。
これらに注意して、美味しい旬の幸を楽しみたいですね!