タバコを吸うことによって、喘息は悪化するのでしょうか?
昔は喘息の治療としてタバコを薦めていた医者もいたらしいのですが、とても気管や肺などの呼吸器系に良い影響があるとは思えませんよね。
タバコの吸いすぎによって咳や痰、そして呼吸困難などを発症する場合、じつは喘息の症状だけとは限りません。
喘息と同時に、COPD(慢性閉塞性肺疾患)も疑ってみましょう。
今回はタバコと喘息の関係、そして聞きなれないCOPDという病気は、いったいどのようなものなのでしょうか?
タバコで喘息は治せるの?
結論から申し上げれば、それは全く科学的な根拠がありません。
常識的に考えれば誰でも分かりそうなものですが、なぜこうした誤解が生まれたのでしょうか?
ストレスが軽減して症状が治まった気になる
喫煙者であれば理解していただけると思いますが、タバコを吸うとリラックスできますよね?
これはタバコに含まれるニコチンから、ドーパミンという快感を生む物質が生成され、それが作用するからなのです。
ドーパミンによりストレスから解放されたり、リラックスできたりすることにより、一時的に咳がおさまったり症状が軽減したのかもしれません。
ただこのドーパミン。ある程度続けていると、体が慣れてしまうのですね。
すると今度は、もっと大量のドーパミンを欲します。そうしないと効かないからです。
これをどんどん繰り返し、タバコによるニコチンの量が増えていった結果がニコチン依存症と呼ばれる状態なのです。
このニコチン依存症になってしまえば、喘息はおろか、肺がんなどあらゆる疾患の元となりかねません。
本来、「健康」という大きな枠組みで考えた場合、喫煙行為によって病気を治療するなどという思考に至るはずは無いのです。
喘息患者がタバコを吸うとどうなる?
喘息症状を起こしている患者の気管支というのは、慢性的に炎症をおこし赤く腫れている状態です。
この腫れによって気管自体が狭くなっているのです。
ここに外部からタバコの煙が気管へ侵入してくると、炎症をおこしている気管が過敏に反応し、体外へ煙を出そうとして咳き込みます。
そして更に気道を閉める反応がおこるので、場合によっては呼吸困難にまで発展する恐れがあるのです。
COPDの危険性
COPDとは?
COPD(慢性閉塞性肺疾患)とは、気管支に炎症をおこしたり、肺細胞が破壊されて、肺の弾力性や柔軟性が失われることにより、呼吸困難に陥る疾患です。
タバコの煙や、有毒な粉塵などを吸い込むことによって、肺に炎症がおこり、呼吸が困難になっていくのですね。
症状としては、慢性の咳や痰がしつこく続きます。また、気管支喘息でよく見られる症状である、ヒューヒューやゼーゼーといった喘鳴もみられます。
更には、呼吸困難により息苦しくなる発作をおこすこともあるのです。
そして軽い運動程度でも、息切れを起こしやすいことも特徴のひとつです。
これは長期間にわたってゆっくりと進行していきます。このため日常生活の活動が、著しく制限されてしまうこともあります。
更に重症化すると、胸部が前後に膨らむビール樽状胸郭や、口をすぼめての呼吸を強いられる口すぼめ呼吸なども、このCOPDの特徴に入ります。
COPDとなる原因は?
まず筆頭に挙げられるのは喫煙が原因です。COPD患者の約90%が、タバコが原因とも言われています。
40歳以上の喫煙者にいたっては、およそ15%から20%の人にCOPDの疑いがあるそうです。
その計算でいくと、日本中には500万人以上の潜在的なCOPD患者がいることになります。
それもそのはず、タバコには4700種類以上の化学物質が含まれています。
このうち、窒素酸化物、硫黄酸化物、一酸化炭素などが、肺の酸化ストレスを増加させて、気管支の炎症や肺細胞の破壊を促進させると言われているのです。
ただし、長期間にわたって喫煙をしているヘビースモーカーの人でも、このCOPDにならないケースもあるのも事実です。
喫煙以外の要因では、大気汚染や、粉塵の吸入なども考えられます。
COPDの治療方法は?
これは重症度によって違ってきます。しかしどのような重症度でも、基本は禁煙になります。
禁煙により、肺機能の低下を食い止めることができるからです。
軽症の場合、禁煙に加えて抗コリン薬などの、気管支拡張薬を服用します。これは短時間作用型と呼ばれる薬剤になります。
これよりやや症状が重い場合、長時間作用型の気管支拡張薬を服用することになります。
重症の場合は、吸入ステロイド剤を使用していきます。更に症状が重い場合、在宅酸素療法の適用もあるでしょう。
欧米では、若年者で重症の場合、肺の移植手術が行われるケースもあるようですが、日本では一般的ではありません。
まとめ
喘息を患っている、もしくは咳が止まらない、そのような場合でも喫煙を続けている方もいるでしょう。
しかし、すでにご自身では「タバコが原因なのでは?」という自覚があるのではないでしょうか?
タバコの煙やニコチンが、気管系統に好影響なはずはありません。ご自身の体をいたわるなら、一刻も早く禁煙されることをお薦めいたします。