首の後ろは脳に近く、さまざまな神経が集まっている部位なので、ここが痛くなると、脳や神経に何か重大な病気があるのではないかと不安になってしまいます。
首の後ろの痛みは実際には首の骨・筋肉の異常や風邪・ヘルペスの前触れであったりして、自分が恐れていた脳や神経の病気とは全然違うことも多く、素人判断が的中しにくい症状でもあります。
ここでは首の痛みが出てきたときに考えられる病気と、どのような科を受診すればよいのかを見ていくことにしましょう。
首の後ろの痛みの原因1 頸椎症
突然首の後ろの部分に痛みが出て、首を後ろにそらしたり、荷物を持ったりしたときにも痛みが走る場合は頸椎症が考えられます。
首は7つの骨(椎骨)で構成されていて、これらを総称して頸椎と言います。
重さ6~8kgもある私たちの頭部をいつも支えてくれている頸椎ですが、加齢により頸椎がすり減ったり、あるいは椎骨と椎骨の間にある軟骨(椎間板)がすり減ったり、頸椎のまわりの筋肉が弱くなったりすると、首の後ろに痛みが生じることがあります。
この痛みは椎骨や椎間板の変形により、神経や脊髄を圧迫刺激してしまうために起こるものです。
以下のサイトにも、首の痛みについて細かい解説がなされています。
参考文献
「OMRON健康コラム 首の痛み...その原因と解消法」
頸椎症の治療は整形外科が専門
頸椎症の症状は首の痛みだけではありません。
頚椎から腕へ向かう神経が圧迫されることで、手や指のしびれ、手が動きにくいなどの症状も出てきやすくなります。
また、頚椎の変形により頚椎の中を通る脊髄が圧迫されることで、手脚のしびれや麻痺、頻尿、便秘などの排せつ障害などが出てくることがあります。
こうした頸椎症を診断・治療するのに最適な診療科は整形外科になります。
頸椎は首を上下左右に動かしたり、回したりする骨と筋肉で主に構成される運動器であり、運動器を診ることが得意なのは整形外科なのです。
整形外科では薬物療法として消炎鎮痛剤、ビタミンB12、筋弛緩剤、抗不安薬、ステロイドなどが処方されます。
場合によっては手術を勧められるケースもあります。
以下の資料では、頸椎に関する診療のポイントを専門的な見地から詳細に解説してくれています。
参考文献
「岡山医学会雑誌 頚椎症性脊髄症の診療ガイドライン」
首の後ろの痛みの原因2 寝違え、筋違え(突発頸項痛)
長時間不自然・不安定な状態で首を固定していると、頸部につながる筋肉が異常収縮により炎症を起こしてしまうのが、寝違えや筋違え(突発頸項痛)です。
首の痛みは一時的なもので数日たてば治ることがほとんどです。
ただしこのような症状が起こる背景に過労や老化、不規則な生活などが関係している可能性があるので、最近の生活を見直してみましょう。
寝違え、筋違えの治療は整形外科や整骨院が専門
寝違え、筋違えによる首の痛みは一時的なもので、自然になくなることがほとんどですが、数日たっても治まらないような場合は整形外科を受診するとよいでしょう。
整形外科では骨に異常がないか診断され、異常がなければ鎮痛剤の処方や注射、牽引療法などが行われます。
また、整骨院では首回りの筋肉の緊張をほぐすような手技が行われます。
首の後ろの痛みの原因3 脊柱靱帯骨化症
脊柱靭帯骨化症とは加齢などが原因で頸椎の靭帯(主に後縦靭帯)が骨のように硬くなり、頸椎内部にある脊髄を圧迫する病気です。
脊髄を圧迫刺激する頸椎症と症状は同様で、首の痛みの他、肩の痛み、手のしびれ、脚のしびれ、排尿障害なども出てきます。
靱帯骨化症の治療は整形外科が専門
靭帯骨化症の診断・治療は整形外科の専門領域です。
頸椎に多い後縦靭帯骨化症はX線(レントゲン)検査で見つけることが可能です。
X線で診断が難しいときはCTやMRIで診断します。
CTで骨化の範囲や大きさを確認し、MRIで脊髄圧迫の度合いを確認していきます。
脊髄への圧迫が強く、日常生活に支障が出るような場合には手術が行われます。
以下のサイトでは、図解入りで頚椎症性神経根症の解説がなされています。
参考文献
「日本整形外科学会 頚椎症性神経根症」
首の後ろの痛みの原因4 ヘルペスによる急性脳炎
ウイルスや細菌などが、脳を保護する膜(髄膜:硬膜・クモ膜・軟膜の3層で構成されている)に入り込み炎症を起こす病気です。
急性脳炎ではヘルペスウイルス(1型単純ヘルペス)によるものが多く、しばらくすると疱疹が出てくる可能性があります。
急性脳炎の治療は脳神経科が専門、ヘルペスなら皮膚科
急性脳炎が疑われる場合は、CT(コンピュータ断層撮影)やMRI(磁気共鳴画像)で頭部を検査し、どこに炎症が起きているかを検出します。
また、脳波を見たりや髄液を採取してウイルスの有無を調べることもあります。
脳神経科でこのような診断・治療がより的確に行われます。
ヘルペスによる痛みなら医療機関に行く前に疱疹が出てくるかもしれません。
この場合、皮膚の異状に自分でも気づき、ヘルペスと判断しやすいので皮膚科を受診するとよいでしょう。
皮膚科ではヘルペスに対する最新、最適な治療を受けられます。
参考文献
「日本神経感染症学会 単純ヘルペス脳炎診療ガイドライン」
首の後ろの痛みの原因5 くも膜下出血
軽症のくも膜下出血では目の奥や側頭部に痛みが起こり、1週間くらい続いた後、首の後ろに痛みが出てくることがあります。
痛みとともに嘔吐感も催すことが多く、このような症状が出た場合、すぐに救急車を呼びましょう。
放置すると命に危険が及ぶことになります。
くも膜下出血の治療は脳神経外科が専門
くも膜下出血は、生命を脅かし、脳に重篤な障害をもたらすことの多い危険な病気として知られますが、この治療は脳神経外科の専門領域となります。
くも膜下出血の手術は「開頭治療」、「血管内治療」など高難度であり、近くにすぐ対応できる脳神経外科医及び医療機関が見つからない可能性もあります。
一刻でも早く治療を受けられるよう、とにかく早急に医療機関に連絡して迅速な対応をしてもらうようにしましょう。
以下のサイトでくも膜下出血の詳細を確認できますので、普段から理解を深めておくと良いでしょう。
まとめ
首の後ろが痛い原因の多くは骨格や筋肉の異常によることが多いのですが、老化や加齢、悪い姿勢、不健康な生活などに体が耐えられなくなってきているサインと考えることもできます。
首に負担をかけない姿勢、運動不足の解消など、自分の生活を見直すことで改善できないかしっかり検討しましょう。
また首の後ろが痛いとき、痛みの度合いがどれくらい強いかも確認しましょう。
尋常でない痛みの場合は重大な疾患にかかっている可能性もあります。
「痛みが強い」と感知した場合はすぐに医療機関を受診し、きちんとした検査・診断・治療を受けましょう。