鏡に向かってご自分の舌を出した時に、舌がひび割れを起こしていた経験はありませんか?
特に痛みなどの違和感はなくても、何だか気になりますよね。
実はこの「ひび割れ」、最悪の場合はお口の中にカビが発生してしまう原因にもなってしまうのです。
今回は、舌がひび割れする3つの原因と治療法、そして診察を受ける病院についても解説してみたいと思います。
溝状舌(こうじょうぜつ)
溝状舌とは、舌の表面に溝の様な模様が表れる病気で、口腔粘膜疾患のひとつに分類されます。
溝状舌は、陰嚢(いんのう)の様な形状を呈することもあり、陰嚢舌、陰嚢様舌ともよばれます。
溝状舌の症状
舌の表面、主に舌背を中心に溝のような模様が対称性に生じます。
舌背にはなく、舌の縁にのみ深い溝を認める溝状舌もあります。
軽度のものであれば、舌の中心付近にある溝が深くなっている程度です。
重度のものになれば、溝の数が増え、その深さもより深くなります。
子どもに生じることはほとんどなく、成人になってから生じ、年齢層が高くなるほど増えてきます。
溝状舌の溝の部分には、乳頭とよばれる小さな突起がなく、平滑な粘膜面を呈しています。
痛みなどの自覚症状はありません。
しかし、深い溝の場合には内部に食べ物が入り込みそこに留まるようであれば、不潔になりやすいために炎症を起こすことがあります。
すると、痛みや味覚異常が生じます。
溝状舌になる原因
子どもには稀なのですが、先天異常によるものと考えられています。
ただし、後天的な舌の慢性炎症によっても生じることがあり、これを炎症性溝状舌とよんでいます。
溝状舌の対処法
残念ながら、溝状舌を防ぐための方法はありません。
溝状舌は何科を受診?
溝状舌は「歯科口腔外科」が専門ですが、一般の歯科でもみてもらうことは出来ます。
溝状舌に使用する薬
溝状舌に特別な治療法はないので、治療薬もありません。
自覚症状がない場合は、通常は経過観察となります。
もし、溝に食べ物が詰まったりして炎症が生じているのなら、溝の内部の清掃やうがい薬などで、お口の中を清潔にするようにします。
ドライマウス
ドライマウスとは唾液の分泌量が減少することで、お口の中が全体的に、もしくは部分的に異常な乾燥状態になる病気です。
日本語では『口腔乾燥症』と訳されます。
ドライ=乾燥、マウス=口ですが、お口が乾く状態の全てがドライマウスと診断されるわけではありません。
ドライマウスはあくまでも『異常に』とありますように病的な乾燥に限られます。
走った後に口が乾燥したり、緊張感から口の中がからからになる様なお口の乾燥感は、正常な乾燥なのでドライマウスには含まれません。
ドライマウスの症状
ドライマウスの症状は、軽いものであればお口の乾燥感を自覚するだけですみます。
しかしお口が乾燥すると、入れ歯を入れると歯ぐきや頬に傷がつきやすかったり、入れ歯が痛くてなじまなかったりします。
また、食べ物を飲み込みにくくなったり、声を出しにくかったりもします。
乾燥の症状が重度になってくると、お口の粘膜が萎縮し、粘膜に亀裂が生じてきます。
舌の粘膜に亀裂が生じると、舌にうろこの様な溝が生じます。
しわの様な溝状を呈していることもあります。
また、灼熱感とよばれる焼ける様な熱い痛みも生じるようになります。
唾液には抗菌効果のある成分が含まれています。
そして、汚れを洗い流す働きもあります。
唾液は、こうした作用でお口の中をきれいに保つ作用があります。
ところが唾液の分泌量が減少することで、清潔に保つことが難しくなります。
その結果、むし歯になりやすくなったり、歯ぐきが腫れやすくなったり、カンジダとよばれるカビがお口に生えてきたりするようになります。
ドライマウスになる原因
ドライマウスの原因は、多種に及びます。
一時的に生じるドライマウスの原因としては、急激な脱水状態や高熱、出血などがあげられます。
持続的に認められるドライマウスの場合、一時的なドライマウスとは異なる原因によって起こっています。
唾液を作り出す組織を唾液腺といいますが、高齢者に多く認められるのが唾液腺の老人性萎縮による唾液分泌量の低下によるものです。
また、頭頸部の悪性腫瘍の治療で放射線療法を顔面に受けた場合にも、唾液腺が障害されるのでドライマウスになります。
その他、糖尿病、慢性腎不全、ビタミンB群欠乏症、貧血、甲状腺機能異常などでもドライマウスが起こります。
ドライマウスの対処法
ドライマウスでは、粘膜を保湿することが大切です。
お口の中の保湿は、保湿剤を使うだけではありません。
お部屋の保湿も大切です。
お口に使う保湿剤としては、保湿剤配合のうがい薬や保湿ジェル、保湿スプレーがあります。
保湿剤配合のうがい薬には、ヒアルロン酸などの保湿剤が含まれています。
適量をお口の中に入れて、数十秒間すすいでから吐き出します。
保湿ジェルは、お口を湿らせるゼリーです。
食後や就寝前にチューブから適量を取り出し、指先や舌を使って、お口全体にまんべんなく行き渡らせます。
保湿スプレーは、ヒアルロン酸などの保湿剤が配合されたスプレータイプの保湿剤です。
喉が渇いたと思ったときに、水を飲む代わりにお口の中にスプレーして使います。
うがいが出来ない様な時にも有効です。
ドライマウスは何科を受診?
ドライマウスは、歯科口腔外科が専門としています。
お口の乾燥感が気になる場合は、歯科口腔外科を受診してみてはいかがでしょうか。
ドライマウスで使用する薬
ドライマウスの治療は薬物療法が中心となります。
軽い症状であれば、うがい薬での対応となります。
そうでない場合は、サラジェンやサリベートなどの口腔乾燥症状改善薬を投与します。
口腔乾燥症状改善薬はすぐには効果が現れません。
そこで効果が得られるまでのあいだ、人工唾液を併用することもあります。
地図状舌
地図状舌とは、舌の表面にいろいろな大きさや形の赤みがさした部分が生じる病気です。
その模様が地図の様な形に見えることから、この名前がつきました。
舌の溝に沿って模様が生じると、溝が深くひび割れたように見えることもあります。
地図状舌の症状
淡く赤みが差した斑状の部分と、その周辺部に幅1㎜〜3㎜ほどの白い、もしくは乳白色の境界線を認めます。
病変の形状や位置、大きさは比較的早期に変化し、数時間から1日のうちに変化することも珍しくありません。
くっついて大きくなったりすることもあります。
このことから、移動性舌炎という呼び方もあります。
全体の経過は、数ヶ月から数年単位となります。
痛みなどの自覚症状はありませんが、炎症を起こせば痛みが生じることがあります。
10歳以下の子どもや若い女性に多いです。
地図状舌になる原因
地図状舌の原因は、ビタミンBの不足や内分泌障害、精神的なストレスなどが考えられていますが、明確な原因はいまだ不明です。
気管支炎や喘息、鼻炎との関連性も指摘されています。
地図状舌の対処法
地図状舌に特別な予防法はありません。
地図状舌は何科を受診?
地図状舌は、歯科口腔外科が専門診療科です。
一般の歯科医院でも診てもらうことは出来ます。
地図状舌で使用する薬
地図状舌に特別な治療法はありません。
炎症から痛みを生じる場合は、うがい薬などでお口の中を清潔にすることで治療します。
まとめ
舌がひび割れてくると、舌ガンなど不安に思うことがあるでしょう。
舌ガンの場合は、ひび割れてくるのではなく、初期は硬いしこりだけで、進行していくにつれて中心部が陥没しその周囲が硬く盛り上がったドーナツ状を呈してくることがほとんどなので、ひび割れとは症状が異なります。
舌にひび割れが生じたときは、そのひび割れの原因が何かを探ることが大切です。
溝状舌などの単なるひび割れなら治療の必要はありません。
ドライマウスが原因で生じたひび割れなら、ひび割れの治療としてではなくお口の乾燥に対する治療として、治療を受けるようにしましょう。