大昔の病気かと思いきや、近年大人にも百日咳の感染が増えていることをご存知ですか?
理由もわからず長引く咳に悩んでいる方は、もしかすると百日咳が原因かもしれません。
今回は、百日咳は他人にうつるのか?その症状をはじめ、百日咳について徹底解説していきます。
百日咳のとはどんな症状?
まずは、百日咳に感染するとどんな症状がどのような経過で起こるのか、またその原因などについて見ていきましょう。
原因
百日咳の原因となるのは、強力な毒素を持つ「百日咳菌」です。
百日咳菌はとても感染力が強く、咳やくしゃみといった飛沫感染をはじめ、直接・間接にかかわらず菌と接触することで容易に感染します。
流行する期間
百日咳は年中感染の恐れがあります。
特に流行し感染しやすいのは春から夏にかけての時期と秋です。
経過
百日咳は潜伏期間の後、軽い咳が出るようになり後に咳発作が重症化し、緩やかに回復していくという経過をたどります。
1歳未満のワクチンを接種していない乳児では脳炎やけいれんなどを起こし重症化することもありますが、大人の場合には咳の長引く軽い風邪程度の症状しか見られません。
潜伏期
ウイルス感染から7~10日前後は潜伏期となり、この期間は症状があらわれません。
カタル期
発症から2週間後までの、比較的症状が軽い時期をカタル期といいます。
この際、咳の他に鼻水やくしゃみといった風邪同様の症状も見られます。
頸咳期(けいがいき)
次に、百日咳の中で一番つらい症状が続く頸咳期に入ります。
この時には、短時間で5回以上の強い咳が発作として起こり、呼吸が辛くヒューヒューと喉がなるなど、百日咳の中でも特徴的な症状があらわれます。
頸咳期の辛い症状は、2~3週間ほど続きます。
回復期
百日咳が回復に向かい始めると、咳の症状が徐々に弱まる回復期に入ります。
頸咳期のころのような強い発作はなくなりますが、軽い咳が2~3週間ほど続き、症状がなくなったと思い始めたころに喉に刺激を受けると思わず咳が出てしまうという症状が2~3か月続きます。
このように百日咳は3つの経過を辿り治癒します。
百日咳は他人にうつる?
百日咳は他人にうつるのか?という疑問ですが、答えは「容易に感染する」となります。
「原因」の項でも述べた通り、百日咳は「百日咳菌」に感染することで発症する感染症です。
この百日咳菌はとても強力な感染力を持つため、感染者の飛沫などから容易に感染します。
特に発症からの5日間の感染力はとても強く、その後3週間ほどで感染力はなくなります。
百日咳の特徴として、子供と大人では感染後の特徴に違いがありますのでそれぞれについて見てみましょう。
赤ちゃんへの感染
百日咳の抗体は母体から胎児へと受け継がれることが無く、そのためワクチンを接種していない乳児が感染すると脳炎や無呼吸といった重い症状を呈する確率が高くなります。
しかし、乳児では呼吸をする力がまだ弱いため、百日咳の特徴的な症状である頸咳期の発作のような咳は出すことができないため、百日咳であることに気づきにくく、それも重症化してしまう要因となっています。
乳児に咳の症状が見られる場合には、百日咳という確信が得られなくとも、肺炎などの合併症を起こす前にかかりつけの小児科を受診してください。
大人への感染
百日咳に大人が感染しても、一般的な風邪と全く症状に変わりがありません。
長引く咳が気になることはあっても、強い発作は見られないため百日咳だと気づかないケースが多いようです。
しかし、家庭内に乳幼児がいる場合には子供へ感染する恐れがありますから、咳の症状が気になる場合にはなるべく早く内科を受診しましょう。
百日咳の感染経路
前述のとおり、百日咳の感染力はとても強く、以下のような感染経路で発症後3週間ほどは他者へ感染させてしまう恐れがありますので、日常生活でも注意が必要です。
飛沫感染
咳やくしゃみによって唾液が飛散することで、唾液中に含まれる百日咳菌が空気中に拡散し、その空気を吸い込むことで感染します。
咳の症状がある間は必ずマスクを着用しましょう。
接触感染
保菌者と直接接触したり、菌が付着したタオルなどを使用することでも百日咳に感染します。
百日咳の症状がある間は、なるべく他者との接触は避け、タオルは使いまわさないなど工夫してください。
大人が感染したときの注意点
大人が百日咳に感染しても重い症状は見られません。
しかし、咳が長引くことで日常生活も不便になりますし何より家族へ百日咳を感染させてしまうこともありますので、油断はできません。
周囲で咳をしている人が多い場合には、ただの風邪ではなく百日咳の可能性があります。
なるべく早く病院を受診し、治療を受けてください。
また、健康な大人が感染しても心配はありませんが、抵抗力の落ちている高齢者などは合併症に注意が必要です。
妊婦が感染したときの注意点
妊娠している状態で百日咳に感染しても、胎児に影響が出ることはありません。
しかし、出産近くに感染してしまった場合には、産後新生児期の赤ちゃんに百日咳をうつしてしまう可能性がとても高くなります。
近年では大人の百日咳がそれまでよりも増加傾向にある為、妊婦に対する成人用三種混合ワクチンの接種が推奨される場合があります。
このワクチンは胎児に影響がなく安全に行えるため、欧州では妊婦の積極的なワクチン接種が推奨されています。
いつまで他人へ感染する?
「感染経路」の項でも触れましたが、他者への感染させるおそれがあるとされるのは、「発症から3週間まで」です。
特に発症後5日間の感染力はとても強いため、出来るだけ他者とは接触しないように心掛けてください。
病院での治療法
百日咳の病院での治療は、主に服薬によるものになります。
体内にある百日咳菌を滅するために、抗生物質を一定期間服用することになるでしょう。
抗生物質の服用から1週間ほどで感染力はなくなりますが、体内の菌が全てなくなるまでには2週間もの長い期間抗生物質を服用する必要があります。
咳による体力消耗が激しく、また酸欠状態になっている場合には、点滴や酸素補給といった治療を入院して行う場合もあります。
自宅で過ごすときの注意点
自宅で療養する場合には、十分な休息と水分補給を心掛けてください。
また、空気が乾燥すると咳が出やすくなりますので、夜間も加湿器を稼働させるなどして対策を取りましょう。
空気の温度変化も喉への刺激になりますから、暖かい室内から寒い外に出る場合、またその逆の時にはマスクやネックウォーマーを着用するなどしてください。
体力を回復することは病気との戦いに最も大切なことですから、十分な睡眠とバランスのいい食事を心がけてくださいね。
妊婦の場合の注意点
妊娠中に感染してしまった場合には、胎児への影響が懸念されることから抗生物質による治療を積極的に行えません。
病院を受診する際には、しっかりと妊娠中であることを医師に伝えてください。
但し、百日咳による危険性が高い場合には、妊娠期間を考慮した上で抗生物質による治療を行うこともあります。
ワクチンの効果は?
妊娠期間中及び乳幼児期のワクチン接種は、明確に効果があることが示されています。
成人は3種混合、現在の乳児は4種混合として予防接種を受けていますがどちらも効果は高く、予防接種していない人が百日咳にかかると重篤な症状を示しますが、ワクチンを接種していれば殆どの人が発症を免れることが可能です。
乳児の場合は生後3か月から12か月までに3回接種し、1歳半ごろに追加で接種、計4回の予防接種を必要とします。
妊婦の場合には輸入のワクチンの接種が可能で、妊娠27週から36週の間に接種することが推奨されています。
但しこちらは輸入のワクチンですから、このワクチンによる副反応が起こっても医薬品副作用被害者救済制度が利用できない可能性もある為十分な注意が必要です。
接種を考えている妊婦の方は、かかりつけの産科医に十分相談の上で行うようにして下さい。
保育園・学校・仕事へはいつから行ける?
学校保健安全法の出席停止基準によると、百日咳の治療を行っていない場合には特有の咳症状がなくなるまで、抗生物質による治療を受けている場合には適正な治療を5日間行った後に出席が可能となっています。
心配な場合には、子供の通う学校や保育園、幼稚園に対応を改めて確認するようにしましょう。
会社への出勤も、同じように考えておくと安心でしょう。
可能であれば治療開始から5日間は休養を取った方がいいですが、大人には感染しても症状が軽微であるため、各々が会社へ出勤対応をどうするかについて確認する必要があるかもしれません。
百日咳の予防法
百日咳の最も有効な予防法はワクチンの接種になります。
それ以外では、咳をしている人が周囲にいる時にはマスクを着用する、手洗いうがいをこまめに行うなど一般的な感染症の予防法と同じ対応を取りましょう。
まとめ
百日咳は現在では殆ど感染の恐れはなくなっているイメージを持つ人が多いでしょうが、成人の感染者は近年増加傾向にあります。
家庭内に乳児がいる方や妊婦さんは特に感染に注意が必要です。
その他、喫煙者は百日咳の症状が悪化しやすいですから、なるべく喫煙は控えるようにして下さいね。