熱中症の対策として、いろいろな方法が取りざたされていますが、その中に牛乳が熱中症対策に効果的という話をご存じでしょうか。
暑い最中に、コクのある牛乳を飲むというのは中々イメージがつきにくいですが、どうやらしっかりした学術証拠があるようです。
今回は、熱中症対策においての牛乳の知られざる効果はもちろん、牛乳が苦手な方に飲んで頂きたい他の熱中症対策飲料の紹介もしていきましょう!
熱中症に牛乳は効果ある?
環境省から出されている「熱中症 環境保健マニュアル2014」では、牛乳1~2杯を運動後30分以内に補給することで血流量を増加し、熱放散能力を改善すると報告しています。
この根拠となったのが、信州大学医学系研究科の能勢博教授の研究グループによる試験です。
能勢先生たちは、20~24歳の若者18名と、67~68歳の高齢者14名を集め、運動と牛乳の関係について調べました。
若者、高齢者、それぞれを2つの群に分け、30分間ほど自転車を使った有酸素運動をさせた後、
「①牛乳の成分である糖質と乳タンパク質を含むサプリメント」と、
「②サプリメントの形状をした栄養成分のない食品(プラセボまたは偽薬と言います)を、それぞれの群に与えてみました。
これを5日間繰り返し、試験の前後で血液を採って調べてみたところ、①の牛乳成分を摂取した群で若者も高齢者も血液の量が増え、体内の水分調節機能が向上しており、汗のかきやすさ、血管の開きやすさが向上していたのです。
参考文献
「牛乳で熱中症対策 2015年度版」
また、以下は能勢先生が今年5月に公表した最新の研究成果になります。
高齢女性37名を対象に、家の中で早歩きとゆっくり歩きを繰り返す簡単な歩行トレーニングを行った後に、牛乳の成分である糖質と乳タンパク質を含むサプリメントを摂ってもらう試験を行ったところ、女性たちの大腿筋の筋力が向上したことを確認しています。
大腿筋は血液を送り出すポンプとしてのはたらきをもち、第二の心臓とも呼ばれます。
大腿筋が強くなることで熱失神の予防効果も期待できます。
熱中症は高温、多湿の環境下で、体で作られる熱がうまく放散できずに、さまざまな症状が引き起こされる状態です。
これは体内の水分を調節する力、血管を広げる力、筋肉の力などがそれぞれ不足することで起こりやすくなるのです。
能勢先生たちの研究グループでは、
「牛乳の成分を体に補給すると血液や筋肉の量が増えて、体内の水分を調節する力、血管を広げる力、筋肉の力が改善される」
ということを、さまざまな人にさまざまな方法で使ってもらい、データを収集しながら証明しています。
こうした試験データなどをふまえ、一般社団法人Jミルクでは、
「筋力アップ、熱中症予防に必要な運動後の牛乳は、若年成人でコップ2~4杯、小中高生や40~60代の中高年でコップ1~2杯。もっと多めに(あるいは少なめに)飲みたい場合は1~4 杯の間で調節しましょう」
と情報提供を行っています。
熱中症に牛乳は予防の対策になる?
熱中症にならないためには、暑さに対して体を順応させることが有効とされています。
ただ暑いのを我慢するのでなく、「暑さに強い体を作る」ということです。
人は体温が上昇したら皮膚血管を広げて、皮膚に多くの血液を集めて、熱を逃がすことができます。
また汗とともに熱を逃がすこともできます。
これらの力がしっかりあれば、暑い環境でも体温と発熱のバランスが維持でき、暑くてもそれほど苦しくありません。
そして、体温と発熱のバランスをよくすることが最高の熱中症対策になります。
牛乳には、
・血液の量を増やすはたらき
・血管を開きやすくするはたらき
・体内の水分量を調節するはたらき
・筋肉の量を増やすはたらき
などがあることはすでに示したところですが、普段から牛乳をしっかり飲むことで、体温と発熱のバランスがよくなり、暑くてもダメージを受けにくい体を作っていけることが期待できます。
牛乳を飲むことは、熱中症の予防のためには有効な手段だと言えそうですね。
熱中症に牛乳以外のおススメ飲料
今まで熱中症によい飲み物として牛乳のことを紹介してきましたが、牛乳自体が体質に合わない方もいると思います。
そのような方のために、以下に牛乳以外で熱中症によい飲み物を挙げてみましたので見ていきましょう。
経口補水液
医療機関では最初に補給される、熱中症の治療薬と言ってもよい飲料です。
塩化ナトリウム、カリウムを多分に含み、浸透圧が低いので体内に吸収されやすくなっています。
スポーツドリンク
経口補水液には及びませんが、飲みやすく、塩化ナトリウム、カリウムを含み、胃から腸への到達速度、腸からの吸収速度も速いので即効で脱水症状を改善するには適しています。
糖分が多いので飲み過ぎには注意した方がよいでしょう。
水
水分を補給するならやはり水。
のどの渇きをいやすのにも適しています。
体液の塩分濃度が上がり、体液の浸透圧が高くなると、皮膚の血流が悪くなり、汗をかきにくい状態になります。
浸透圧の低い水を飲むことで浸透圧を下げ、血液の循環をよくすることができます。
麦茶
水分を補給し、のどの渇きをいやすのにも適しており、微量ですがナトリウムやカリウムなどのミネラルも補給できます。
水と同様、体液に比べて浸透圧が低いので、体液の塩分濃度が高いときに補給すると、血液の循環をよくすることができます。
また麦茶には緑茶などと違って利尿効果のあるカフェインも含まれていないので、水分を体内にたくわえやすい飲み物と言えます。
甘さがなくさっぱりした飲み口で、安上がりですむこともあり、暑い中スポーツをするときに水筒、やかん、ジャーなどに入れておく飲み物の定番が麦茶です。
「暑いときは麦茶が一番おいしい」と思っている人は多いことでしょう。
しかしおいしいからと言って、飲みすぎると体がだるくなったり、下痢を起こしたりしやすくなりますので、適度な補給を心がけましょう。
まとめ
牛乳を中心に熱中症によい飲み物について見ていきました。
実際に暑くて喉が渇いているときに飲む飲み物としては、牛乳はのど越しがあまりよくないかもしれません。
それよりも麦茶、スポーツドリンク、水などの方がいいという人が多いでしょう。
しかし、栄養成分の豊かな牛乳は、常日頃から飲んでおくことで血液の量を増やしたり、筋肉の量を増やしたりして、私たちのエネルギー代謝を高めてくれるはたらきがあります。
牛乳は、熱中症に負けない体を作るために有効な飲み物であるということを覚えておくようにしましょう。