ジメジメした梅雨時期から少し過ごしやすくなってきた秋口まで、多くの方が体験する熱中症。
熱中症という言葉はかなり聞くようになりましたが、実際にご自分や周りの方がかかった時に、適切な対処ができる人は意外と多くないようです。
そこで今回は、実際に熱中症になったら施すべき対処法、食事で気を付けること、お風呂はどうするかについてまとめましたので、是非参考にしてみて下さい。
熱中症になったらすぐに施すべき対処法
熱中症は、暑(熱)い環境にいるとき、あるいは暑(熱)い環境にいた後に生じる健康被害の総称です。
熱中症の症状には、
- めまい
- 立ちくらみ
- 失神
- 生あくび
- 大量の発汗
- 強い口渇感
- 筋肉痛
- 筋肉の硬直
- 頭痛
- 嘔吐
- 倦怠感
- 虚脱感
- 意識障害
- けいれん
- 高体温
などが挙げられます。
日本救急医学会が発行している「熱中症診療ガイドライン」によれば、熱中症には軽い症状から重い症状まで大きく3つのレベル(Ⅰ度~Ⅲ度)があります。
参考文献:「熱中症診療ガイドライン2015」
意識障害がなく、めまい、立ちくらみ、筋肉痛、こむら返り程度の軽いもの(Ⅰ度)なら、その場の対応で症状の改善・軽減ができます。
どのように対処したらよいか実際に見ていきましょう。
対処法1:涼しい場所に避難して体を冷やす
熱中症になっているときは「体内で熱を作る力」が強くなり過ぎ熱が体内で増える一方で、「体内の熱を逃がす力」が弱くなっています。
そのため、体温がいつも以上に高くなっています。
だから熱中症になったら第一にすべきことは「体を冷やすこと」です。
風通しの良い日陰やクーラーの効いている屋内など、とにかく少しでも涼しい場所に行って体を冷やしましょう。
涼しい場所に移動したら、衣服を脱いでこもってしまっている体の熱を逃がし、水で濡らしたタオルで体をふいたり、水を皮膚にかけたりして少しでも体を冷やすように努めましょう。
氷のうや氷まくらなどがあれば、太い血管が近くにある首や脇の下などに当てましょう。
これでさらに冷却効果が高まります。
対処法2:水分と塩分を補給する
スポーツドリンクは糖分が多いものの、医療機関で出される電解質の経口補水液と成分構成が似ており、水分はもちろん、塩分(塩化ナトリウム)を始めカリウムやマグネシウムなどのミネラルが程よく配合されています。
とり急ぎ、500mlペットボトルのスポーツドリンクを1本購入してごくごく飲むのがよいでしょう。
近くにコンビニや自動販売機がない、買い置きもないという場合は、まずお茶でも水でもいいからとにかく水分を多く摂り、体内から熱を少しでも除くように努めましょう。
対処法3:ラクな姿勢で休息、症状が治まるのを待つ
涼しい場所に行き、水分・塩分補給ができたら、衣服を脱ぎ、ベルトをしているならゆるめ、横になって寝そべられるようならそのようにして、少しでもリラックスできる姿勢を取って症状が治まるのを待ちましょう。
時間とともに体がだんだんラクになっていくようでしたらとりあえず安心です。
しばらく休息して「家に帰れるくらい回復したな」と思ったときに、帰宅して涼しい環境でしっかり休息を取りましょう。
対処法4:「症状が治まらない」「異常が出てきた」と感じたら医療機関へ行く
体調が回復に向かわず、症状が治まらない場合、あるいはひどくなってきた場合には、熱中症が進行している可能性があります。
その場合には病院や診療所に行き、冷却装置で体を冷やしたり、電解質の経口補水液を飲んだり、点滴したりするなどの治療を受ける必要があります。
当然、治療は早めに受けた方が、重症にならずに済みます。
ですから「どうもおかしい。医療機関に行こう」という判断は早い方が得策です。
普段の健康な状態に比べどんな異常があるか、その度合いはどうか、などを意識しながらできるだけ冷静に体の様子を見るようにしましょう。
様子を見ているうちに、
- 熱が出てきた
- だるさが増してきた
- 吐き気が強くなってきた
- 頭痛がひどくなってきた
- けいれんしてきた
などの異常が見られたり感じられたりしたら、一人で我慢して回復を図ろうとせずに医療の力を借りるようにしましょう。
もし、苦しくて自分で移動するのが難しいと思ったら、迷わずに救急車を呼びましょう。
熱中症になったら食事はどうする?
熱中症では体内で増えてしまった熱のために水分や塩分(塩化ナトリウム)が多く失われていますので、水分補給はもちろん、塩分が多く含まれている飲み物や食べ物がお勧めです。
先ほども紹介しましたが、水分と塩分の補給ができるスポーツドリンク、あるいは梅昆布茶、みそ汁などもよいでしょう。
梅干し、わかめなどを使った料理もお勧めです。
いつもよりも塩、しょうゆ、みそ、ソースなどの調味料を多めに使った料理を食べるとナトリウムが効率よく補給できます。
ナトリウム以外のミネラルも意識して食事で摂るようにしましょう。
野菜や果物、豆類などを食べればカリウムが補給できますし、青さ、のり、わかめなどを食べればマグネシウムが補給できます。
知らず知らずのうちに体から抜け出してしまっているミネラルを、食べ物できちんと補充するようにしましょう。
熱中症になったらお風呂はどうする?
熱中症では汗で体がべとべとになっているので、「お風呂に入ってさっぱりしたい」と思う人もいるかもしれません。
でも、熱中症になったらお風呂は慎みましょう。
熱中症では体に熱がたまる一方で、熱を体外に逃しにくい状態になっています。
つまり発汗により脱水が起きて、末梢血管が広り熱を帯びた状態になっているのです。
このような状態で熱いお風呂に入ると、脱水や末梢血管の拡張がさらに進み、ますます脳への血液が不足し、その結果、激しいめまい、意識障害、失神などが起こりやすくなってしまいます。
「浴室熱中症」という言葉があります。
これは読んで字のとおり、お風呂に入ることで起こる熱中症です。
お風呂でのぼせてボーッとする状態が続くとやがて意識障害を招き、そのうちに体温がお湯の温度まで上昇して熱中症になり、お風呂から出ることができず、ついには意識もなくなり……。
「浴室熱中症」は血圧変動による意識障害とともに浴室での溺死の大きな原因の一つとなっています。
熱中症といえば夏にかかる病気と思われるかもしれませんが、「浴室熱中症」は冬に多発します。
というのも、冬は寒いので体が熱を逃がさないようにしています。
そのような状態で熱い風呂に長時間入ると体に熱がたまる一方で、熱を体外にうまく逃せず熱中症になりやすいのです。
自分で気づかないうちに熱中症になってしまうのが怖い点です。
「浴室熱中症」は高齢者に多く見られます。
そのため消費者庁では、高齢者の入浴中の事故を防ぐため、「湯温は41度以下、湯につかる時間は10分までを目安にしましょう」と呼びかけています。
私たちが心身のリラックスのために入るお風呂。
実は熱中症を引き起こす危険があるということを頭の片隅に置いておきましょう。
まとめ
今回は、熱中症にかかったときの「対策」「食事」「お風呂」に焦点を当てて解説してきました。
対処法や食事に関して、「何をするのか」を細かく紹介しています。
熱中症は場合によっては一刻も早く適切な処置が望まれます。
今回ご紹介した内容を覚えておいていただき、いざと言うときには素早い対応が出来るようにしておきたいですね。