喘息は慢性的に炎症を起こして、狭くなっている気道で起こります。
炎症を起こして狭くなっている気道に刺激が加わることで、気道はさらに狭くなってしまい、痰などが増えることでさらに気道が狭まり、呼吸困難状態になります。
そして、息をするたびにゼーゼー、ヒューヒューといった音(喘鳴)が出てきたり、激しく咳き込んだりするなどの喘息特有の発作が出てきます。
尚、咳だけの症状の喘息は、咳喘息と言います。
今回は喘息や咳喘息になった場合、市販薬や処方薬でどう治療していけばよいか見ていくことにしましょう。
喘息の薬で市販薬と処方薬は何が違う?
30年ほど前には喘息は気管支拡張薬で抑える治療方法が主流でしたが、1990年代に「喘息の原因は気道の慢性的な炎症である」ということが解明されました。
以来、医療機関では喘息治療には、発作が起こらないようにするために、ステロイド吸入薬を中心とする長期管理薬による治療を行っています。
長期管理薬には、
- 抗炎症薬(吸入ステロイド薬)
- 気管支拡張薬(長時間作用性吸入β2刺激薬)
- 抗炎症薬(吸入ステロイド薬)と気管支拡張薬(長時間作用性吸入β2刺激薬)の両方を配合した薬剤
がもっぱら使われています。
①~③の薬は皆、処方薬(医療用医薬品)であり、医師の処方なしでは入手できません。
一方、市販薬として上市されているものは、気管支拡張薬のジプロフィリンやdl-メチルエフェドリン塩酸塩などが有効成分として使われており、有効成分の量は処方薬よりも少なくなっています。
こうした気管支拡張薬を使った治療は90年代以前に行われていたもので、一時的に咳や喘鳴などを抑えることはできますが、気道の慢性的な炎症を改善する効果は高くありません。
喘息による咳を確実に止めるには医療機関にかかり、処方薬で長期的にコントロールしていく必要があると言えるでしょう。
喘息や咳喘息で市販薬を利用する場合
「医療機関に行くまで喘息を一時的に抑えたい」
「喘息かもしれないが風邪が長引いているだけかもしれない。咳の症状は軽いのでとりあえず様子を見たい」
などのような場合は、市販薬を使って経過観察を行うとよいでしょう。
前述しましたが、喘息及び咳喘息の適用がある市販薬ではジプロフィリン、dl-メチルエフェドリン塩酸塩、メトキシフェナミン塩酸塩などの気管支拡張剤の他、痰の排出を促すマオウやカンゾウなどの漢方薬が使われています。
しかし、処方薬に比べると有効成分の配合量が少なくなっていますし、最先端の治療薬ではありません。
喘息や咳喘息で処方薬が必要な場合
発作が起こる度にその場しのぎの対応を長年続けていくと、気道炎症は悪化、難治化し、加齢や体力低下などで体調が悪くなったときに、突然重篤な発作に見舞われるといった事態も考えられます。
気道の炎症を確実に抑えるには、吸入ステロイド薬や長時間作用性吸入β2刺激薬などの処方薬による長期コントロールが必要になります。
また、激しい喘息発作に見舞われたときには、短時間作用性吸入β2刺激薬という強い処方薬を使うと症状を抑え込みやすくなります。
子供と大人での副作用などの注意点
子供の注意点
日本小児アレルギー学会が発行している「小児気管支喘息治療・管理ガイドラインハンドブック2013ダイジェスト版」では、乳幼児の喘息として
- 一過性の初期喘鳴群
- 非アトピー型喘鳴群
- IgE関連喘鳴/喘息群
の3つに分類しており、①の症状は3歳頃には消失していき、②の症状は6歳以降消失していきますが、③は成年になっても続いていくことを報告しています。
参考文献
「小児気管支喘息治療・管理ガイドラインハンドブック2013ダイジェスト版」
①、②ならば時間がたてば自然治癒する場合がほとんどなのですが、③のIgE関連(アレルギー型)喘息である場合、喘息とのつきあいは長くなり、薬も長期的に服用していく必要があります。
子供の咳こみが少し長引いていると感じたら、医療機関を受診して喘息の有無を確認するとともに、アレルギーがないかを確認する血液検査や皮膚試験を行って、喘息のタイプを確認することが望ましいでしょう。
大人の注意点
大人の喘息患者は大半がアレルギー型(IgE関連)喘息です。
アレルギー型喘息では症状がなくても慢性的に気道が炎症しており、ダニの死骸や綿ぼこりなどのアレルゲンやタバコの刺激、ストレスなどが加わると喘息が出てきやすくなります。
したがってこれらの症状を起こすきっかけとなるアレルゲンを避けるべく居住空間の環境に配慮するともに、禁煙、適度な睡眠、健康的な生活を心がけるようにしましょう。
参考文献
「アステラス チェンジ喘息」
喘息や咳喘息の主な市販薬
喘息や咳喘息の市販薬は、気管支を拡張させて喘息の症状を一時的に抑えるものが揃えられています。
以下に代表的なものを見ていきましょう。
ミルコデ錠A(第1類医薬品)
気管支拡張薬であるテオフィリン、dl-メチルエフェドリン塩酸塩が配合されています。
「ゼーゼー、ヒューヒュー」と音をたてるような咳、痰を抑えたいときに有効です。
気管支拡張薬の他、3種類の生薬(キキョウ、セネガ、カンゾウ)が配合されており、これらの生薬には痰のからみを取り除き、咳を鎮める効果があります。
15歳未満は服用できません。
1回2錠、1日3回食後に服用します。
タイプは24錠と、48錠の2つがあります。
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アスクロン(第2類医薬品)
気管支拡張薬としてメトキシフェナミン塩酸塩を配合し、その他、咳を鎮めるノスカピン、痰を取る効果のあるカンゾウなどが配合されています。
ゼーゼーする咳や痰を取り除きたいときに服用すると効果的です。
微粒タイプになっており、
- 15歳以上は1包
- 8~14歳は1/2包
を1日3回服用します。
8歳未満は服用できません。
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アドレニンエースシロップ(指定第2類医薬品)
咳及び喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒュー)を伴う咳を鎮めるシロップ状の治療薬です。
気管支拡張薬にジプロフィリン、dl-メチルエフェドリン塩酸塩、抗アレルギー成分としてd-クロルフェニラミンマレイン酸塩を配合しています。
その他、咳や痰を取るのに有効な生薬であるオンジ、ゴミン、ニンジン、ナンテンなどを配合しています。
1日4回、食後及び就寝前の服用で、1回あたり、
- 15歳以上は10ml
- 11~15歳は6.5ml
- 8~11歳は5ml
と定められています。
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フスコンZ液(指定第2類医薬品)
生後3カ月の乳児から飲めるシロップ状のお薬です。
気管支拡張薬としてジプロフィリンやdl-メチルエフェドリン塩酸塩が配合されています。
また咳や痰を取り去る効果のあるカンゾウ、キョウニン、バクモントウなどの生薬も配合されています。
服用量は1日4回、1回あたり、
- 15歳以上は10ml
- 14~11歳6.5ml
- 10~8才5ml
- 7~5才3ml
- 4~3才2.5ml
- 2~1才2ml
- 11~3カ月1ml
となります(20mL×4本―計80mlで税込1404円)。
まとめ
今回は喘息や咳喘息の市販薬を主に見てきましたが、これらは一時的にその場の症状を抑えるのには有効ですが、根本的に症状を改善するにはやはり医療機関を受診するのがよいでしょう。
もしアレルギー性の喘息があると、長く付き合っていくことになるのは否めません。
しかし今は、よい薬・治療法が出てきており、喘息があっても発作に悩まされることなく、かなり激しいスポーツも元気よくできるようになってきています。
是非前向きに症状と向き合い、薬と上手な付き合いを心がけて頂きたいと思います。