「標準医療情報センター 急性上気道感染症 」
「国立感染症研究所 成人・高齢者におけるRSウイルス感染症の重要性」
RSウイルスを正式に表記すると「Respiratory Syncytial Virus」、日本語に訳すと「呼吸器合胞体ウイルス」と言います。
聞きなれないRSウイルスという病名ですが、1歳までに50%以上の乳児が感染し、2歳までにほぼ100%の乳幼児が感染するというきわめてメジャーな疾患です。
乳幼児の感染時に最も強い症状が現れ、肺炎や気管支炎などに発展するケースが多く見られますが、大人になっても感染し、風邪の症状として現れます。
ここでは大人になってからのRSウイルス対策について見ていくことにしましょう。
RSウイルスで大人にあらわれる症状
RSウイルス感染により上気道に炎症(ウイルス性上気道炎)が起こり、いわゆる風邪の症状が出てきます。
咳・喉の痛み
喉のイガイガ感から始まり、コンコンと乾いた咳が出てきます。
咳は一週間程度続きますが、やがて治まっていきます。
鼻水
症状が軽いうちは透明感のある鼻水が出てきますが、RSウイルスによる炎症が肺や気管支などの下気道に及ぶと、黄色や緑色の鼻水に変わっていきます。
発熱・頭痛・倦怠感
37℃程度の微熱が出てきて頭痛や倦怠感を伴うケースもありますが、それほど高熱にはなりません。
発熱は3日以上続くことは少なく、38℃以上になることはあまりありません。
痰
RSウイルスによる炎症が喉を越えて肺や気管支などの下気道に及ぶと、湿った咳とともに黄色や緑色の痰が出てきます。
咳も痰の絡んだ湿った咳になっていきます。
病院は何科を受診?
RSウイルス感染による症状は、ウイルス性上気道炎、つまり「風邪」の症状に相当します。
この場合、医療機関の受診は内科あるいは呼吸器科がよいでしょう。
RSウイルスの大人の治療法
RSウイルスを撃退する特効薬は今のところ開発されていません。
症状をやわらげる治療(対症療法)が基本となります。
自然治癒をうながす
風邪、すなわちウイルス性上気道炎は安静、水分・栄養補給により自然に治癒していきます。
「風邪と言えば抗生物質」と考えてしまいますが、抗生物質はウイルスではなく、微生物(細菌)を殺す薬です。
ウイルスは細菌でなく、細胞をもたないタンパクの集合体なので、抗生物質が効きません。
そのため最近では風邪のときに抗生物質を処方しない医療機関が増えてきています。
しかし高熱を伴ったり、喉の奥に細菌感染を疑わせる分泌物(膿栓、白苔など)が認められたりするような場合には、細菌感染を合併していることが考えられるので抗生物質の投与が有効になります。
咳や痰、喉の腫れに対する治療
消毒剤の入ったうがい水でウイルスや痰を洗い流しましょう。
医療機関を受診すると、殺菌効果のあるトローチやカルボシステインなどの去痰薬が処方されます。
発熱や痛みに対する治療
頭痛・発熱などで苦痛が強い場合、医療機関では、
- アスピリン
- インドメタシン
- イブプロフェン
- ロキソニン
などの、熱や炎症を鎮める作用のある薬(酸性非ステロイド性抗炎症薬)が処方されます。
鼻水、鼻づまりへの治療
医療機関を受診すると、抗ヒスタミン薬、抗コリン薬(気管支拡張薬)、点鼻血管収縮薬などが処方されます。
詳細は、以下のページでも確認できます。
RSウイルスに市販薬は効果ある?
RNウイルスに感染した場合は自然治癒に任せるのがよいのですが、医療機関にかかることなく少しでも症状の改善を図りたい場合、殺菌効果の高い喉のうがい薬や市販のトローチ薬などがおすすめです。
頭痛がひどい場合には、ロキソニンSやイブなどの痛み止め薬も有効でしょう。
仕事へはいつから行ける?他の人にうつる心配は?
2~3日たてば軽快することがほとんどで、インフルエンザのように高熱でふらふらするというほどの症状はありません。
職場復帰は自己判断になります。
ただし、咳やくしゃみでも感染(飛沫感染)しますし、ウイルスの付いた食器やおもちゃなど物を介しても感染(接触感染)します。
出勤時のマスク着用は最低限のマナーと言えるでしょう。
大人の場合は自然治癒でも大丈夫?COPDや喘息をもつ高齢者では?
大人では基本的に自然治癒に任せてよいのですが、大人でも高齢化して免疫力が低下するとRSウイルスが肺炎や気管支炎を引き起こしやすくなります。
COPD(Chronic Obstructive Pulmonary Disease:慢性呼吸器疾患)や喘息をもつ高齢者がRSウイルスに感染すると、インフルエンザと同程度に致死率の高い重篤な肺炎へと発展しやすくなることが近年着目されてきており、介護施設での高齢者の集団感染リスクが懸念されています。
参考文献:「国立感染症研究所 成人・高齢者におけるRSウイルス感染症の重要性」
まとめ
大人のRSウイルス対策について見てきました。
赤ちゃんや小さい子供と異なり、大人では免疫力が発達しています。
そのためRSウイルス感染による危害は低下し、感染しても軽い風邪程度で済むケースがほとんどです。
しかし高齢化し免疫力が低下した大人では、RSウイルス感染から重篤な肺炎・気管支炎へと発展してしまう危険性が、赤ちゃんや小さい子供同様高くなっていきます。
現実的に赤ちゃんや小さい子供のいる家庭では、どうしてもRSウイルスにかかりやすくなります。
(ひい)おじいちゃん、(ひい)おばあちゃんなどの高齢者が、赤ちゃんや小さい子供と同居している場合には、RSウイルス感染時の対応に慎重を期する必要がありそうです。