水下痢(水様性下痢もしくは水様便)とは固形物を含まず、水分量が全体の90%を超える普通の下痢よりも水っぽい便のことです。
便意を催し、便座に座り、少し力を入れると、シャーと出てくるときの便、あるいはちょっと力んだときに少し漏れ出てしまうような便が水下痢です。
一度排便してもまたすぐに便意を催してしまうのも水下痢の特徴です。
このような水下痢が出てしまうのには、いくつかの原因が考えられます。それらについて見ていきましょう。
水下痢が止まらない原因
水分の摂り過ぎ
腸が吸収できる量の水分をとると、胃腸が拒絶反応を起こして水下痢が出やすくなります。
暑い夏だからといって、自分の体の水分許容量を超えるくらい飲み物をがぶがぶ飲んでしまうと、体で吸収しきれないのです。
かといって高温多湿の中、全然水分を取らないでいると熱中症になりやすくなりますし、かといっておなかがタプタプいうほど飲んで、体がけだるくなったり、水下痢が出てしまったりするのは体にとってよくないことです。
何事も「過ぎたるは及ばざるがごとし」
ほどほどが大事なのです。
適度に水分を補給して、健康管理に努めましょう。
ストレス・緊張のため(過敏性腸症候群)
試験や面接など、「ここは自分にとってとても重要だ」と思うような局面に臨む直前におなかを下し、水のような下痢が出てしまったことはありませんか?
これはストレスがかかることで脳から腸につながる神経が過剰な反応をしてしまい、腸管のぜん動運動が過度に活発化し、泥水のような便になって出てきてしまうのです。
このようなストレスや緊張によって水下痢が出てくる症状を「過敏性腸症候群」と言います。
過敏性腸症候群での下痢症状は男性に多く、逆に女性では便秘になるケースが多いと言われます。
過敏性腸症候群は検査では異常がみつからないにもかかわらず、下痢が続きます。
症状の軽い人も含めると、人口の1割程度が、過敏性腸症候群にかかっていると言われます。
以下のサイトでも過敏性腸症候群について詳しく知ることができますので、もっと見聞を深めたい方はご覧になってみて下さい。
参考文献
IBSネット 下痢型情報ナビ
ウイルスや細菌などによる感染性腸炎
「食あたり(食中毒)」による水下痢です。
生の肉や魚介類などを食べ、そこに寄生していた病原性のウイルス、細菌、寄生虫などが、腸管内に侵入して増殖することで引き起こされます。
ペットやヒトとの接触によっても感染してしまいます。
よく見られる感染性腸炎には、鶏卵や牛肉から感染するサルモネラ腸炎、生の鶏肉やレバーから感染するカンピロバクター腸炎などがあり、これらは激しい水下痢とともに高熱を伴います。
また、幼児の嘔吐や下痢などの吐しゃ物や便、あるいは空気から人から人へと感染するロタウイルス腸炎でも、白色の激しい水下痢とともに高熱を伴います。
家畜の糞便から感染するO157(腸管出血性大腸菌腸炎)も水下痢から始まり、翌日には血便を出してしまうのが典型的な症状とされています。
以下の、「大阪市立十三市民病院 消化器内科 大川清孝先生」ご執筆の、「日本大腸肛門病学会」のページには感染症腸炎に関する内容が詳細に記述されていますので、是非ご覧になってみて下さいね。
参考文献
日本大腸肛門病学会 感染症腸炎
乳糖不耐症(牛乳不耐症)
乳糖を分解する酵素(ラクターゼ)が生まれつき欠乏していたり、病気のため欠乏してしまったりすることで起こります。
生まれつき乳糖不耐症の人では新生児期もしくは乳児早期、お乳を飲んだ後、数時間から数日で激しい下痢をしてしまいます。
これは日本では「小児慢性特定疾病」に位置づけられ、数十万、数百万に一人の頻度で発生する希少疾患です。
乳糖不耐症にかかる人のほとんどは、ラクターゼが次第に減少していき、後から乳糖不耐症になってしまう人です。
乳糖不耐性になってしまうと、少量の乳糖を含む食品、それこそ少量の牛乳や乳製品を摂ると、これらに含まれる乳糖を分解、消化吸収できなくなるので、おなかのゴロゴロが止まらなくなり、30分から2時間くらいで急激な便意を催し、水のような下痢が出てきます。
日本人では成人の約40%がラクターゼの働きが弱いとも言われています。
乳糖不耐性によって起こる症状はふつう軽いのですが、腸の病気や低栄養、薬の副作用、腸管手術などをきっかけに乳糖不耐症になった場合、症状が重くなってしまうことがあるそうです。
参考文献
MSDマニュアル家庭版 乳糖不耐症
水下痢が止まらないときの対処法
安静にして様子を見る
今紹介したように水下痢が出る原因はさまざまです。
また同じ水下痢でも原因が違えば症状が違い、その軽さ重さも違います。
ストレスや緊張が原因で出てくる軽い過敏性腸症候群では、体には異常がなくても出てくるものですし、水分や牛乳の摂り過ぎによる水下痢は水分や牛乳を控えれば治まります。
感染性腸炎では、抗生物質の投与が必要な場合がありますが、もっとも大切なことは細菌やウイルスなどの病原体をいち早く体から排出することです。
体が出したがるだけ出して、安静にして様子を見るというのが水下痢の最初の基本的な対処法と言えるでしょう。
水分と電解質の補給
水下痢を重ねた体の中は、水分と電解質(とくにナトリウムやカリウム)が少なくなっているので、水下痢が治まってきたらこれらをきちんと補給することが重要です。
水分と電解質の補給には経口補水液が最適ですが、常備していない場合には、スポーツドリンクにもナトリウムやカリウムが含まれているので、これで代用するとよいでしょう。
ただしスポーツドリンクは糖分が多いので、飲みすぎには注意してください。
またコーヒー、炭酸飲料、アルコール類は胃腸に刺激を与えるので控えるようにしましょう。
医療機関での受診
水下痢が出る前後で、高熱に襲われることがあります。
このような場合、細菌、ウイルス、寄生虫などが腸内に棲みつき、増殖する感染性腸炎に侵されている可能性が高くなります。
このような場合、早急に医療機関を受診しましょう。
感染性腸炎と診断されれば、細菌、ウイルス、寄生虫などを殺す抗生物質を処方されたり、点滴を受けたりすることで、重症化、合併症などに至る前に、症状の鎮静化を図ることができます。
感染性腸炎は他の人に移してしまう恐れがあるので、とにかく早く医療機関での診断・治療を受けて、他の人との接触を極力避けるような対応をする必要があります。
いざと言うときに慌てない為に、日本臨床内科医会が発表しているこちらの対処法を一読しておくことをお勧めします。
参考文献
日本臨床内科医会 下痢の正しい対処法
自律神経を整える
ストレスや緊張による過敏性腸症候群の場合、自律神経(交感神経と副交感神経)のバランスの乱れが原因となっている可能性があります。
適度な運動で気分が転換でき、ストレス解消にもなり、自律神経のバランスが整えられて、症状が軽減することがあります。
また健康的な食事・睡眠、規則的な生活リズムを心がけることで改善に向かうことがあります。
規則正しい食事・睡眠、適度な運動、健康のための基本的な活動を行うことで、健康的な排便リズムを作っていきましょう。
水下痢のときの食事は?
おかゆや煮込みうどんなど、消化のよい炭水化物をしっかり摂るようにしましょう。
みそ汁、柔らかく煮込んだ野菜スープなども水分と塩分、ミネラルの補給に適しているのでおすすめです。
これらの食事をゆっくり食べるようにしましょう。
一方、刺激が強い香辛料を使った食事や、消化がよくない脂肪分や繊維質の多い食事は、控えたほうがいいでしょう。
水下痢におすすめの市販薬
水下痢を抑えるような市販薬も出ています。
主に、
(2)腸への刺激を抑える薬
(3)便の中の水分を吸い取って便を固める薬
(4)腸内の善玉菌を増やして、下痢の原因となる悪玉菌の増殖を抑える薬
(1)の典型的な市販薬としては「トメダインコーワフィルム」や「ストッパ下痢止めEX」などが挙げられます。
(2)の典型的なものとしては「正露丸」が有名です。
(3)の典型的なものとして「ビオフェルミン止瀉薬」が挙げられます。
(4)は乳酸菌を有効成分とする整腸薬が相当します。有名なものに「ヤクルト」、「太田胃散整腸薬」、「わかもと整腸薬」などがあります。
まとめ
繰り返し訪れる便意、少しでも気を緩めると便もれしてしまうのではないかという不安、排便後も数時間続くけだるさなど、水下痢になるとその日はとても残念な一日になってしまいます。
水下痢は短期間で治るものがほとんどですが、ウイルス性からくる水下痢は発熱、白濁した下痢ときに血便などが出て、さらには周囲の人に移してしまう可能性があります。
ですので水下痢は「一人我慢は禁物」ということを覚えておきましょう。