さまざまな疾患にはその疾患の原因となる遺伝子があります。
これらの遺伝子には、子供に受け継がれることで、子供もその疾患にかかりやすくなるものがあります。
たとえば「家族性大腸腺腫症」という大腸にポリープができやすく大腸がんになりやすい病気の遺伝子は子供に受け継がれると、その子供も大腸にポリープができやすく大腸がんになりやすくなりことが知られています。
一度血が出るとなかなか止まらない「血友病」という病気も遺伝性疾患であることでよく知られています。
では「喘息」はそのような遺伝性の病気なのでしょうか? 以下に見ていくことにしましょう。
喘息は遺伝するもの?
喘息は、気道が慢性的に炎症を起こして狭くなっているところに刺激が加わり、炎症がひどくなり気道をさらに狭めて、息苦しなってしまう病気です。
その原因の一つとしてほこり、花粉、カビ、菌などに対して気道粘膜が起こすアレルギー反応が挙げられます。
一般的に、こうしたアレルギー体質は遺伝しやすいといわれており、両親がともにアレルギー保有者の場合は、両親がともにアレルギーを持っていない場合と比較して、子供がアレルギー体質になる可能性は約4倍になるという報告があります。
だからアレルギー反応の一つとして現れる喘息も、子供に受け継がれやすいと言うことはできるかもしれませんが、喘息が遺伝するという明確な医学的根拠は今のところ立証されていません。
喘息は遺伝的要因のみでなく低気圧、気候変動、ストレスなどの環境要因も発症に関与することが知られており、実際に喘息に悩まされる人には血液検査でアレルギー反応が見られないケースも多く、喘息になる原因をアレルギー反応に限定することはできないのです。
喘息は遺伝的要因、環境要因が複合的に絡み合うことで発症するというのが現在の医療現場での認識となっています。
以下のページにも、喘息に関する遺伝などの環境について説明されています。
喘息で赤ちゃんが注意すること
アレルギー疾患のある赤ちゃんは、アレルギーのない赤ちゃんに比べて、気道が敏感であり、かつ気道でいつも炎症が起こっているので、気道が狭まっていて喘息を起こしやすくなっている状態になっています。
咳、ゼーゼー、ヒューヒューという音(喘鳴・ぜいめい)、呼吸困難などのような症状が見られた場合、喘息である可能性があります。
風邪でもこのような症状が見られますが、特に風邪というわけでもなく、ハウスダスト、タバコの煙、気候の変動などにより、このような症状が反復して起こる場合、アレルギー性の喘息をもっているかもしれません。
いずれにしても咳、喘鳴、呼吸困難などの喘息の症状を確認したら、すぐに小児科、呼吸器科、アレルギー科などを受診し、専門医の診断を仰ぐようにしましょう。
赤ちゃんの喘息の治療法
まだ一通りの食べ物を食べていない2歳未満の赤ちゃんは、食経験が不足していることや、季節変化や空気中のアレルゲン物質に十分に触れていないことなどの理由により、アレルギー検査をしてもアレルゲンを特定できないケースがあります。
そのため赤ちゃんは、特に喘息を確認するための検査はせず、経過を見ます。(この時点で間違いなく特定のアレルゲンに反応し、アレルギーを持っていることを確認できることもあります。)
そして3歳頃に、
- 呼吸機能を調べる検査
- 血液検査
- 皮膚反応でアレルゲンを調べる検査
などを行い、喘息があるかどうかの確認することが多いようです。
一方で、喘息の半数以上は、2歳までに発症すると言われています。
そこで小児科の専門医は、赤ちゃんが吐く息の様子から、乳児ぜんそくを早期に発見し、軽度のうちから適切な治療を開始するように取り組んでいます。
実際には赤ちゃんの吐く息が「ゼーゼー」「ヒューヒュー」としている状態が、風邪をひいている場合などを除き繰り返し行われる場合、喘息と診断するようです。
また家族に
- 喘息の人
- アレルギーのある人
- アトピー性皮膚炎などのある人
がいれば、それも喘息と診断する材料となります。
赤ちゃんの喘息につきましては、以下のページにも詳しいことが書かれていますので参考にしてみて下さい。
参考文献
「中野こどもクリニック 乳児ぜんそく」
喘息で子供が注意すること
子供は言葉で症状を伝えることがうまくできません。
泣いたり、不機嫌になったりすることで喘息の症状を訴えている可能性があります。
子供の身近にいる人たちが、夜中や明け方などにいつも咳き込んでいないか、「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という音(喘鳴)がないか、などをチェックするようにしましょう。
ちなみに日本小児アレルギー学会が発行している「小児気管支喘息治療・管理ガイドラインハンドブック2013ダイジェスト版」では、
子供の喘息には
- 「①一過性の初期喘鳴群」
- 「②非アトピー型喘鳴群」
- 「③IgE関連喘鳴/喘息群」
の3種類があることを明示しています。
参考文献
「小児気管支喘息治療・管理ガイドラインハンドブック2013ダイジェスト版」
また、①の症状は3歳頃には消失すること、②の症状は6歳以降消失すること、③は成年になっても続いていくことを報告しています。
①、②ならば時間の経過による自然治癒が期待できますが、③のIgE関連(アレルギー型)喘息である場合、喘息とのつきあいは長くなり、薬も長期的に服用していく必要があります。
子供に喘息症状があることがわかったら、医療機関を受診し、まず喘息が①~③のどのタイプに当てはまるのかを確認するとよいでしょう。
子供の喘息の治療法
医療機関で喘息の治療を行う場合には、発作を抑えるため、収縮し狭まっている気管支を広げる薬を使います。
気管支を広げる薬としては長時間作用性β2刺激薬が用いられます。
長時間作用性β2刺激薬には、
- 吸入薬(セレベントなど)
- 貼付薬(ホクナリンテープ)
- 経口薬(メプチン錠、スピロペント錠など)
の3形態があります。
また、喘息の発作を予防するために、吸入ステロイド薬(フルタイド、パルミコートなど)を継続的に使用します。
加えてアレルギー症状を抑えるために、アレルギー性鼻炎などの治療薬で使われる抗アレルギー剤(ロイコトリエン受容体拮抗薬)などが使われます。
家庭では喘息が悪化しないような環境を整備することが大切となります。
- 寝具は防ダニ布団にする
- じゅうたんを使わずフローリングにする
- 毛の生えたペットは飼わないようにする
- 家族は全員禁煙する
などの工夫が求められます。
まとめ
喘息はさまざまな要因では発症するため、遺伝と直接関係あるとは言い切れないのですが、子供が喘息になった場合、医療機関では診察の際に両親や兄弟姉妹にアレルギーがないかを確認します。
そうしてみると「喘息は遺伝素因が関与している」という考えが実際のところは一般的であると言えるでしょう。
近年、喘息に関連する遺伝子も見つかってきており、今後、遺伝との明確な関連を示すデータが出てくることが十分に考えられます。