蕁麻疹は皮膚の一部が突然赤く盛り上がるとともにかゆくなり、しばらくすると跡形もなく消えてしまう病気です。
蕁麻疹という名前の由来は、人が蕁麻(イラクサ)の葉に触れるとこのような皮膚症状が起こることに、ちなんでいるそうです。
蕁麻疹が起こる仕組みは、皮膚の血管に周囲にある「マスト細胞」という細胞が、細胞の中から「ヒスタミン」などの物質を出し、ヒスタミンが血管を刺激することで皮膚の内部で血管の拡張や血漿成分の滲出などが起こり、それが外からは蕁麻疹として見えるのです。
蕁麻疹は皮膚血管周囲のマスト細胞が刺激されることで起こりますが、マスト細胞が刺激を受ける原因はさまざまあります。
ここでは蕁麻疹の原因、すなわち「マスト細胞が刺激を受けてヒスタミンが出てくる要因」について見ていくことにしましょう。
蕁麻疹の原因【大人】
原因1 食物・薬物・植物・昆虫などのアレルギー反応で蕁麻疹が起こる
マスト細胞に刺激を与える物質は「アレルゲン(アレルギー誘発物質)」と呼ばれます。
アレルゲンはヒトの体を作るタンパクとは異なるタンパクであり、体にとって異質のものです。
異質であるがゆえにマスト細胞はこれを排除しようとし、蕁麻疹などのアレルギー反応を起こすわけです。
人によっては食べ物がこの「アレルゲン」になってしまう場合があります。
大人の場合、食物では、
- エビ
- カニ
- イカ
などの甲殻類や、
- 小麦
- 果物類
- サバなどの青魚
- 貝などの魚貝類
- 肉類
などに含まれるタンパクが、アレルゲンとなって蕁麻疹が出ることがあります。
また、抗生物質・アスピリンなどの抗炎症薬などの薬物の内服・注射・外用で、これらの薬剤の何らかの成分が「アレルゲン」となって蕁麻疹が出ることがあります。
さらに
- 花粉
- ハウスダスト
- ペットの毛
- 綿ぼこり
- カビ
- 細菌
などを吸入し粘膜に付着した場合にも、これらがアレルゲンとなって蕁麻疹が出ることがあります。
- ハチ
- ムカデ
- イソギンチャク
などに刺されたり、
- イラクサ
- ウルシ
- ゴム
などに触れたりしたときも、アレルギー性蕁麻疹が出ることがあります。
こうしたアレルギー反応では、体内のマスト細胞の表面に「免疫グロブリンE」という仲介物質となるタンパクが現れ、これがマスト細胞に付着した状態となります。
そして、この免疫グロブリンEにアレルゲンが付着することでマスト細胞が刺激され、アレルギー反応に至ることがわかっています。
また、アレルギー反応を起こしやすい人は、体内で免疫グロブリンEが増えていることがわかっています。
原因2 食物・薬物(アレルギー反応を介さない蕁麻疹)
原因1で示した、免疫グロブリンEを介したアレルギー反応とは異なる仕組みで、マスト細胞が活性化されることにより起こります。
これは「非アレルギー性蕁麻疹」と呼ばれます。
- 豚肉
- サバ
- タケノコ
- ホウレンソウ
- コショウ
の他、ヒスタミンが含まれている食品を食べたりすることで蕁麻疹が起こります。
このタイプの蕁麻疹は、同じ食品を食べても組み合わせの材料や、その日の体調などにより症状が出たり出なかったりする傾向があります。
またアスピリンなどの痛み止めの薬を注射したり皮膚に塗ったりすることでも、アレルギー反応とは異なる仕組みで非アレルギー蕁麻疹が起こることがあります。
原因3 皮膚への物理的な影響により蕁麻疹が起こる
機械性蕁麻疹
皮膚表面にベルト、時計のバンド、ブラジャーなどをつけているところに蕁麻疹が起こる。
温熱蕁麻疹
入浴して温まったときに蕁麻疹が起こる。
寒冷蕁麻疹
皮膚の一部が冷やされたときに蕁麻疹が起こる。
日光蕁麻疹
皮膚が直射日光を受けることで蕁麻疹が起こる。
その他
皮膚への物理的な影響により蕁麻疹が起こる。
特発性蕁麻疹
直接の原因は不明……でも蕁麻疹が起こる。
実は蕁麻疹になる人の大多数(70%程度)が、原因が何なのかわかっていません。
このような原因がわからない蕁麻疹は「特発性蕁麻疹」と呼ばれます。
「特発性蕁麻疹」で発症してからの期間が1カ月以内のものは「急性蕁麻疹」、1カ月以上経過したものは「慢性蕁麻疹」と呼ばれます。
これらの蕁麻疹では毎日のように蕁麻疹が出てきます。
慢性蕁麻疹では夕方から夜間にかけて蕁麻疹が出てくることが多いようです。
蕁麻疹の原因【子供】
原因1 特発性蕁麻疹
先ほど「蕁麻疹の原因【大人】」のところでも紹介したように、子供も蕁麻疹の直接の原因は不明であることが多いというのが実際にところです。
子供では、風邪に伴って蕁麻疹が出てくることもあります。
しかし、感染、食物、疲労、ストレスなどさまざまな要因が考えられるとしても、何かに特定することができないというのが「特発性蕁麻疹
の特徴です。
原因2 卵や牛乳アレルギーによる蕁麻疹
子どもで最も多く見られる蕁麻疹を伴うことの多いアレルギー反応です。
卵白に含まれる「オボアルブミン」や「オボムコイド」というタンパク質。
あるいは牛乳に含まれる「カゼイン」や「β-ラクトグロブリン」というタンパク質。
小麦に含まれる「α-アミラーゼ」、「グリアジン」などのタンパク質。
これらが体内でアレルギー誘発物質(アレルゲン)として作用することで、マスト細胞を刺激して蕁麻疹をはじめとするアレルギー反応が起こります。
卵アレルギーや牛乳アレルギーは、乳幼児期で発症することがきわめて多いのですが、症状は比較的軽度で年とともに減少していきます。
原因3 運動・発汗・ストレスなどで蕁麻疹が起こる
子供あるいは20歳前後の若者に多い蕁麻疹として、入浴や運動などで体が温まったときや、ストレスなど受け緊張した状態にあるときに出てくる蕁麻疹があります。
この蕁麻疹は、「コリン性蕁麻疹」と呼ばれます。
皮膚にある交感神経の末端で「アセチルコリン」という神経刺激を伝える物質が過剰に出ることで、マスト細胞が刺激され、ヒスタミンが出ることで蕁麻疹が起こります。
コリン性蕁麻疹は全身に出やすく、大きさは1~4㎜と小さいのが特徴です。
またコリン性蕁麻疹は手には出ないことも大きな特徴です。
大部分のものは出現して30分~1時間以内に消失します。
蕁麻疹は何科で診察を受ける?
日本皮膚科学会では「蕁麻疹診療ガイドライン」や「皮膚科Q&A」などの蕁麻疹についての治療法などを医療従事者や一般生活者に向けて発信しています。
参考文献
「日本皮膚科学会 蕁麻疹診療ガイドライン」
「皮膚科Q&A」
蕁麻疹治療では、もっとも専門性が高い診療科は皮膚科と言ってよいでしょう。
また多くの人は、自分なら我慢できても子供に蕁麻疹ができれば気になって仕方ないので、つい小児科に子供を連れて行きます。
そうしたことから小児科の医師も蕁麻疹を診察・研究する経験が豊富で、蕁麻疹治療についてよく知っていると思われます。
子供を診てもらう場合、皮膚科医と小児科医の両方を取得している医師であればなおさらよいでしょう。
まとめ
蕁麻疹の原因は多くの場合、特定することができない「特発性蕁麻疹」であると言われます。
それでもじっくり見ていくことで何らかの原因が見つかるかもしれません。
とくに蕁麻疹とアレルギー反応は関連性が高く、検査を行ったり、じっくり自分や子供の生活ぶりを見直してみることで、食物アレルギーや薬物アレルギーが見つかるきっかけになるかもしれません。