インフルエンザを発症したときに怖いのは、熱や下痢などの諸症状だけではありません。
その後遺症にも注意が必要となります。
今回は、インフルエンザの後遺症で注意したい10種類の病名をまとめて紹介いたします。
インフルエンザ脳症
症状
インフルエンザ脳症というのは、インフルエンザに伴って発症する急性脳症のことです。
「インフルエンザ脳症」は通称名で、「インフルエンザ関連脳症」という表現が最も正確とされています。
インフルエンザにかかっている時で、さらに一般的に高熱がある時期に発症します。
けいれんを起こすこともあり、
- 嘔吐
- 意識障害
- 脈拍や血圧
- 呼吸の変化
などを伴います。
また、異常言動や異常行動が見られる場合もあります。
インフルエンザ脳症は感染症法5類全数届出疾患といって、診断したすべての医師は保健所への届出が義務付けられています。
その届出においての必要な症状として、インフルエンザの感染症状がある方が意識障害に伴って38℃以上の高熱、または何らかの中枢神経症状を認めた場合としています。
これは乳幼児が多くかかります。
原因
なぜインフルエンザ脳症にかかってしまうのかは、今のところ原因ははっきりとされていません。
ですから治療も対処法も確立されていないのでしょう。
対処法・治療法
このような症状が見られたら、救急車を呼んだほうが賢明です。
しかしインフルエンザ脳症かどうかの診断は医師でも難しいくらいですので、自分で判断出来なければ医療機関に連絡して状況を説明すれば指示してくれるでしょう。
厚生労働省のガイドラインによると、インフルエンザ脳症の症状はきわめて多様で、この診断は経過中、回復期、死亡後に確定されることもあり、必ずしも発症後早期に確定診断できるとは限らないとしています。
急激に発症して症状の進行も早いです。
そして進行してしまってからでは、どのような治療を行っても効果は断定的だとされています。
そのため、インフルエンザ脳症と診断される前からの支持療法を行うことを軸とされています。
- ガンマグロブリン大量療法
- メチルプレドニゾロン大量療法
の有効性が期待できるとされています。
診察する科は、救急で内科か小児科にかかることになるでしょう。
前庭神経炎
症状
激しい回転性のグルグルとまわるめまいが数日間続きます。
一度良くなってもまためまいの発作が出てきます。
大人が多くかかるのも特徴です。
原因
三半規管、前庭神経に多くはヘルペスウイルスが感染することで発症します。
風邪などの症状をきっかけにめまいが起こります。
ウイルスが体外に排出されず、神経に感染すると一生神経の中に潜んでいることになり、体調が崩れたときにウイルスが再活性化して発作を起こします。
対処法・治療法
抗ウイルス薬を服用すると早くめまいを抑えることが出来ます。
診察は耳鼻咽喉科を受診しましょう。
ヘルペス
症状
一言でヘルペスといっても症状はたくさんあり、種類も水疱・帯状疱疹ウイルス、単純ヘルペスウイルス1型、単純ヘルペスウイルス2型と多くあります。
ヘルペスというのはヘルペスウイルスのことで、簡単にいうと小さな水ぶくれが集まったように出る湿疹で急性炎症性皮膚疾患のことをいいます。
体のあちこちの部位あらわれます。
多くの方に知られているものは水ぼうそうや帯状疱疹、唇のまわりに水疱ができる口唇ヘルペスでしょう。
ヘルペスウイルスは子供では水疱瘡、大人では帯状疱疹をおこします。
このように種類も多様で、年齢に関係なくかかります。
原因
ヘルペスウイルスが皮膚や粘膜に感染することが原因です。
口唇ヘルペスの場合は、大人では半数以上の人が感染しているというデータがあるようです。
もともとヘルペスウイルスに感染している人が、体調を崩した時や疲れがたまった時などに、唇のまわりに水疱が出てくることが多いです。
そしてヘルペスウイルスが顔や腹部、背中に帯状に出れば帯状疱疹というわけです。
対処法・治療法
抗ヘルペスウイルス剤を医療機関にて処方してもらうことが治療となりますが、症状が出たらひどくなる前に医師に相談しましょう。
疱疹が出た場所によって、受ける科が変わります。
小児科、内科、皮膚科などを受診しましょう。
髄膜炎
症状
脳や脊髄をおおっている髄膜にウイルス、細菌、真菌などが感染して急性の炎症をおこしていることをいいます。
- 全身の倦怠感
- 激しい頭痛
- 悪寒
- 高熱
- 吐き気
- 嘔吐
これらの症状が見られます。
進行するとけいれんや意識障害が起こります。
子ども、大人関係なくかかります。
原因
細菌やウイルスの感染が原因です。
新生児、乳幼児、成人、50歳以上と、年齢によってかかりやすい原因菌が違います。
おたふくかぜウイルスなど、夏風邪を起こすウイルスが原因のことが多く見られます。
対処法・治療法
医療機関にて髄液検査を行います。
脳神経外科を受診しましょう。
中耳炎
症状
鼓膜の奥にうみがたまる病気です。
耳の奥、根元がとても痛くなります。
比較的、急に痛くなってきます。
特に小学校入学前の幼児に多い病気です。
原因
ほとんどは風邪をきっかけとして菌が耳からではなく、鼻の奥から奥に入ってきます。
子供の耳管は大人よりも太く短く、傾きも水平なので鼻から菌が入りやすいのです。
対処法・治療法
鼓膜の奥にたまったうみに対して、抗生物質を服用したり、鼓膜切開術をしたり、症状の度合いに合わせての治療を行います。
受診するのは耳鼻咽喉科が良いでしょう。
熱性けいれん
症状
高熱が出ている時に発熱に伴って発作性のけいれんを起こします。
乳幼児に多くみられます。
原因
髄膜炎などの中枢神経感染症や代謝異常、その他、明らかな発作の原因が見られないものが熱性けいれんです。
対処法・治療法
冷静に観察し、体温、けいれんの様子、時間を記録しておきます。
15分以上けいれんが続くようであれば、救急車を呼ぶ必要があります。
どちらにしろ6か月未満の乳児の場合は至急小児科、または救急外来などを受診しましょう。
気管支炎
症状
気管支に炎症があり、咳や痰など呼吸器症状の病気の総称です。
年齢を問わずかかる病気です。
原因
急性気管支炎は、
- アデノウィルス
- インフルエンザウイルスなどのウイルス感染
- マイコプラズマ
- 百日咳菌
などによる感染が原因です。
対処法・治療法
温かくして安静にして栄養をとることが大切です。
咳や痰など症状に応じて薬を服用します。
内科、小児科耳鼻咽喉科を受診しましょう。
症状が長く続く場合は、呼吸器科を受診してみるのも良いでしょう。
肺炎
症状
発熱や咳、痰などの症状があり、レントゲンで異常な影が見られます。
咳のみが続くものもあります。
年齢に関係なくかかりますが、特に乳幼児や老人がかかりやすい病気です。
原因
なんらかの病原性の微生物が、肺に侵入することで起きる炎症が原因です。
対処法・治療法
肺炎の原因が細菌性かそれ以外かを見極めて、それぞれに見合う抗生物質を処方してもらいます。
内科、呼吸器科を受診しましょう。
心筋炎
症状
心不全や不整脈を起こして生命を脅かすこともある怖い病気です。
風邪や胃腸炎に似た症状、胸の痛みなどが典型的に見られます。
大人に多くみられる病気です。
原因
筋肉で構成された心臓ですが、その筋肉である心筋に炎症が起きてしまうことで心臓のポンプの働きが低下し、心不全を発症してしまうことが原因です。
ウイルス感染が多いと言われていますが、
- 細菌感染
- 薬剤
- 膠原病によるもの
など、原因が特定できないものも多くあります。
対処法・治療法
レントゲン、心電図などの検査などの他、心臓カテーテル検査などが必要になる場合もあります。
入院が必要になる場合も多く、強心剤、血液透析を行うこともあります。
循環器内科を受診しましょう。
ライ症候群
症状
突然嘔吐し、致死性の高い肝炎と脳炎が進行するものをライ症候群と言います。
意識障害やけいれんが起きることもあります。
原因
特に4~15歳までの子供が、水ぼうそうやインフルエンザを発症して発熱している時にアスピリンを含む解熱剤を服用すると、ライ症候群を発症してしまうリスクが高くなると言われています。
しかし、なぜアスピリンがライ症候群のきっかけになるのかは、現在のところ分かっていません。
現在子供に対してアスピリンを処方されることは少ないですが、成人の風邪や解熱剤には市販薬でも販売されています。
そのため大人がかかる可能性が高い病気といえるでしょう。
対処法・治療法
入院しての全身管理を必要とします。
抗けいれん剤を使用して脳浮腫の治療を行います。
インフルエンザや風邪を発症している時に意識障害やけいれんが起こったら、救急外来や救急車を呼びます。
まとめ
風邪やインフルエンザを発症した場合は、医療機関を受診して薬を服用しているからと安心しきってしまうのは禁物です。
何か気になる症状が現れた場合には、慌てずよく観察して医療機関に連絡をとりましょう。
心配な時には、セカンドオピニオンを求めるのもひとつの手段です。
参考文献
「厚生労働省 インフルエンザ脳症ガイドライン 」
「朴沢耳鼻咽喉科 HP めまいが長く続く方に、前庭神経炎?」
「明治通りクリニックHP ヘルペス」
「八重洲クリニック 髄膜炎とは」
「たかはし耳鼻科 HP」
「和光医院 HP 熱性けいれんがおこったら」
「渋谷内科呼吸器アレルギークリニック 気管支炎の診断・治療」
「慶応義塾大学病院 医療・健康情報サイト 心筋炎」
「高見台クリニック ライ症侯群」