気象病とは、気圧、気温、湿度など天候の変化によって体調不良が出てきたり、病気が悪化したりする状態を総括して示した呼称です。
たとえば、天気が悪いと古傷がうずくような症状は気象病の典型と言えるでしょう。
この他に、不眠、頭痛、肩こり、めまい、メニエール病、喘息、うつ病、神経痛、関節炎、リウマチなども気候が発症に影響しますし、心筋梗塞、脳卒中などの重篤な病気も気象が多分に影響すると言われ、これらの病気は気象病としての側面を持っています。
ではここから「気象病」について詳しく見ていくことにしましょう。
気象病の症状
体のあちこちで痛みが出てくる
気象病では気圧の変化が最も強い発症の原因と考えられており、気象病はとくに気圧の低下によって起こりやすいと言われます。
気圧が下がることで血管にかかる圧力も下がり、血管を流れる血液中の水分がいつも以上に細胞内に流入することで細胞が膨らみます。
そこに、痛みや炎症を起こさせる物質であるヒスタミンやプロスタグランジンなどのホルモンが出てきて、体内に張り巡らされた神経を刺激することで、頭痛、関節痛、神経痛による痛みが普段よりも強く現れると考えられています(痛みが出てくる場所は人それぞれ異なります)。
また、気圧の変化により身体の平衡感覚をコントロールしている内耳の血流低下が起こり、めまいや耳鳴りが起こることもあります。
不眠・だるさなどが出てくる
気温の急激な変化も気象病の要因となります。
とくに気温が低下した場合、体はエネルギーを多く産生して体温を保とうとしますが、このときに自律神経の中の交感神経が強く働く状態が続きます。
これにより自律神経全体のバランスが崩れてしまうと、脳内の神経伝達物質(セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンなど)の分泌バランスもいつもと違う状態となり、不眠、全身の倦怠感などが起こりやすくなります。
また、交感神経が強く働き続けることで血圧や脈拍も上昇していきますので、心臓や血管に持病がある人では狭心症、心筋梗塞、脳卒中などの発症リスクも起こりやすくなります。
「台風の来ている夜は眠りにくい」という人は多いと思いますが、台風による強い低気圧で交感神経が長く強く働く状態が続き、リラックス状態や入眠時のときに強く働く副交感神経が思うように体の中で働けない状態になっているからです。
ちなみに自律神経とは、昼間の活動時に働く(働く=体内で電気信号をさかんに流す)交感神経と、安静時や睡眠時に働く副交感神経の2つから成ります。
不安感やネガティブな気持ちが強くなる
気圧や気温の変化から自律神経が乱れることで、精神のバランスも崩れやすくなります。
不安や緊張が続いたり、集中力不足や気分の落ち込みが起こりやすくなったりすることで、自律神経失調症、神経症、うつ病、更年期障害などが出やすくなります。
参考文献
「伊月病院 気象病について」
気象病の治療法・予防法
適度な運動や入浴をする
気象病では気象の変化により体調不良となりますが、この体調不良には自律神経の乱れが大きく関係しています。
自律神経の乱れを自分で治すには運動が一番です。
適度な運動やストレッチをすることで体全体の血液循環をよくなっていき、交感神経の緊張が解きほぐされ、副交感神経が働きやすくなります。
適度な運動は、自分でできる最高の治療なのです。
気象の変化によって興奮しがちな交感神経を、適度な運動で鎮めるように努力してみましょう。
とはいえ倦怠感、痛みなどに悩まされる人の中には「体がしんどいのに運動なんかできないし、する気もない」と考えてしまう人もいるでしょう。
そのような人には入浴がおすすめです。
少しぬるめのお風呂に長く入ることで、血液循環がよくなるとともに副交感神経もより強く働きやすくなります。
食事・睡眠を規則正しくとる
気象病が引き金となり、その後、不眠、頭痛、肩こり、めまい、うつ病、頭痛、神経痛、関節炎、リウマチなどの症状が強くなってきたら、日常生活にひと工夫取り入れてみましょう。
適度な運動に加えて、栄養バランスのよい食事を摂り、睡眠時間を過不足なく確保して、できうる限り規則正しい生活を送るようにしましょう。
こうした無理なく続けられる生活スタイルを自ら確立することで、気象病で崩された自律神経のバランスを修復し、症状の緩和・改善を待つのです。
なお、このとき交感神経を高める食べ物・飲み物は摂らないよう留意する必要があります。
交感神経を高める飲食物としては、カフェインを多く含むコーヒー、紅茶、お茶などが挙げられ、これらを夕食後に摂取すると、カフェインに過敏な人では夜遅くまで交感神経が刺激され、眠りにくくなってしまいます。
また塩分の摂り過ぎは血圧上昇を促し、これに伴い交感神経が過敏になってしまうのでほどほどにするように心がけましょう。
居室空間に留意する
夏場冬場のエアコンは、効いていない部屋や屋外との温度差が激しく、温度差の違う空間を行き来することで自律神経の乱れにつながりやすくなります。
また気密性の高い建物ではエアコンをつけて閉め切っていると室内の気圧が下がることがありますので、ときどき窓やドアを開け換気して、内と外で気温や気圧の差が激しくならないように留意しましょう。
まとめ
今回は「気象病」と呼ばれる症状について紹介してみました。
なお、気象によって影響を受ける病気は、頭痛、めまい、関節炎、神経痛、リウマチ、うつ病を始め、膨大な数・種類へと及んでいき、それぞれに治療薬がありますが、気象病は国で認められた疾患名ではないので、適用とされる薬は存在しません。
あえて「気象病」に対抗する最善の治療法を挙げるならば、「適度な運動」、「規則正しい食事」、「入浴」などになります。
私たちの身体が天候の影響を受けて「気象病」になりやすいのは季節の変わり目、台風、大雨など気温や気圧が大きく変動するときです。
昼間や活動時に働く交感神経が興奮していつもより強く長く働き、自律神経のバランスが崩れやすくなります。
こんなときは副交感神経の活動を高めるような工夫が求められます。
しかし、「何としても副交感神経を高めよう」と気負い続けるかえって交感神経が高まっていきます。
副交感神経を高めるにはとにかく身体が自然にリラックスできるような環境づくりをすることです。
そうすることで副交感神経がほどよく働いてくれます。
その環境づくりとしてできる工夫が「適度な運動」、「規則正しい食事」、「入浴」などというわけです。